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NHK 受信料 支払い義務あるか 最高裁 初の判断 放送法第64条1項


NHK 放送法第64条1項 「合憲」とするも 「契約の自由」に言及せず 最高裁 2017年12月6日



NHKが、NHKとの受信契約締結を拒んだ人に対し、受信料の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長 寺田逸郎長官)は、2017年12月6日、NHKとの受信契約について定める 放送法 64条1項を「合憲」とする判断を下すとともに、NHKが契約を拒む人を相手取って裁判を起こし、勝訴が確定すれば、テレビ設置時まで遡って受信料の支払い義務が生じるとの初判断を示しました

ただし、「申し込み(契約を求める通知)が被告に到達した時点で契約が成立している」との NHKの主張に対し、最高裁は、「放送法は受信設備を設置することや、NHKからの一方的な申し込みによって受信料の支払い義務を発生させるのではなく、双方の合意によって義務を発生させるとしたもの」と指摘、最高裁判決は、NHKの上告を棄却(NHKの主張を否定)しています

また、最高裁は、「NHKがテレビ設置者の理解が得られるよう努め、これに応じて受信契約が結ばれることが望ましい」とも指摘しており、NHKの実態がそうなっていないことも暗に示唆しています


この裁判では、2017年10月25日に、最高裁で弁論が開かれており、弁論は判決が変わる際に必ず開かれるが通例ですが、今回は事実上の「現状肯定」となっており、前例に照らして不可思議なものとなっています

また、2017年4月には、金田勝年法相(当時)が、『国民生活に与える影響が大きい』として、規定を合憲とする意見書を最高裁に提出しており、これは、判決が社会に大きな影響を与えると判断した場合にとれる措置で、戦後 2例目となる、政治介入を強く匂わせる判決となっています


最高裁大法廷は、NHKの受信料制度について、「表現の自由の下で国民の知る権利を充足させるために採用された仕組みで、憲法上許容される立法裁量の範囲内」、「知る権利の充足と健全な民主主義発達への寄与を究極的な目的とし、特定の個人・団体や国家機関から財政面で影響が及ぶことがないよう、受信設備(テレビ)設置者に公平負担を求めたもの」と位置づけました

その上で、受信契約を定めた放送法 64条は強制的な義務を課した規定とし、「受信料制度は憲法が保障する『表現の自由』の下で、国民の知る権利を満たすために合理的だ」とし、「合憲」と判断しましたが、「公共性」についての定義はなく、憲法が同様に保障する「契約の自由」を制限するものか否かについても明確には触れておらず、整合性に欠けた中途半端で不合理な結論となっています


最高裁大法廷(裁判長 寺田逸郎長官)は、NHKと契約拒否者の契約については、「双方の意思の合致が必要」とし、契約の成立時期を「契約申込書が設置者に届いた時点」としたNHKの主張を否定、「契約の自由」を制限するものと定義したわけでもないのに、「契約の自由」などを保障した憲法に違反するとした男性側の主張も退け、双方の上告を棄却しました

また、受信料の支払い義務が生じる時期については、「テレビ設置時点」とし、NHK側が受信料を徴収できなくなる消滅時効(5年)の起算点は「契約時点」との見解も示しています


判決では、NHKは、未契約者に支払い督促などの法的手続きを直接取ることはできず、契約を拒む人については提訴して、契約承諾の意思表示を命じる判決を得るよう NHKに求めています

契約拒否者が提訴され、敗訴となった場合、テレビ設置月から受信料を支払わなければならなくなったととれますが、NHKが提訴する場合、テレビ設置の事実や時期を立証する必要がある点は従前と変わらず、捜査権を持たない NHKがそれを立証することは事実上不可能で、テレビ設置の事実やテレビ設置月を特定することは不可能です (購入 ・ 購入月=設置 ・ 設置月ではありません)


さらに、放送法 64条1項にある契約義務を除外する「ただし」書きに触れていない上、地方裁判所レベルで判決の分かれるワンセグ機能付き携帯電話の取り扱いや「設置」の定義などにも触れられておらず、退官を 約 1ヶ月後に控え、最後の判決言い渡しとなる寺田逸郎長官(裁判長)が、判決を急ぐあまり中途半端な結論を残したような感のある、再度判例が変更される可能性を強く感じさせる性格のものとなっています


NHKは、今回の訴訟で、2006年に自宅にテレビを設置し、契約を拒み続けた東京都内の男性に対し、受信契約の締結と 2006年以降の受信料の支払いを求めていましたが、この日の大法廷判決で、双方の上告を棄却したことにより、男性に受信料計 約 20万円の支払いを命じた 1審 東京地裁 と 2審 東京高裁の判決が確定しました


今回の判決は、最高裁大法廷 15人の裁判官のうち、14人の多数意見であって、全員一致の判決でないことには、留意が必要です

木内道祥(みちよし)裁判官は、「受信契約の締結は判決で命じられる性質のものではない」とし、「消滅時効」などについても、ほかの時効と比較し、「消滅することのない債務を負担するべき理由はない」、「設置時からの支払い義務はあり得ない」 とする反対意見を述べています

鬼丸かおる裁判官は、受信契約の詳細が放送法に規定されていない点を挙げ、「契約の自由という大原則の例外であることを考えると、本来は契約内容まで含めて法律で定めることが望ましい」と補足意見を述べています



受信契約の成立時期 について


NHKが未契約者を相手取って裁判を起こし、勝訴判決が確定した時点で受信契約が成立すると判断されました

受信料徴収の発生時期 について


未契約者がその後支払うべき受信料については「すぐに契約を締結した人との間で支払うべき受信料に差が生じるのは公平ではない」として、受信設備設置時からの支払いを求めています

消滅時効(5年)の起算点 について


未払い受信料を徴収できる時効(5年)について、「受信契約の成立前には時効は進まない」とし、これにより、理論上は、NHKはテレビを設置してから数十年間にわたって未契約だった人に対しても、裁判を起こして勝訴すれば、全期間の受信料を徴収できるとしました



NHK広報局 および NHK上田会長 砂押営業局長は



NHK広報局は、「判決は公共放送の意義を認め、受信料制度が合憲との判断を示したもので、NHKの主張が認められたと受け止めている。引き続き、受信料制度の意義を丁寧に説明し、公平負担の徹底に努める」とのコメントを出しました (『NHKの主張が認められた』って???、判決は NHKの上告を棄却=NHKの主張を否定しているのですが・・・どういう神経をしているのか筆者には理解できませんが、棄却されても勝ったことにしてしまうのであれば、最初っから上告なんかしないでくれ=裁判費用は『みなさまの受信料』からまかなわれています)

未契約者への対応については、「基本的には従来通り。まずは丁寧に説明して契約をお願いしていく」としています (『丁寧に』という部分は、実態と大きく異なっていると思いますが・・・)


上田良一 NHK会長は、2017年12月7日の定例記者会見で、「公共放送としての役割を果たしているとの信頼がない限り、単に訴訟だけで受信料をちょうだいするとは考えていない」と訴訟の乱発を否定し、「判決でも双方の意思表示の合致が必要とされている。これまでの通り、丁寧に説明する姿勢に変わりはない」と述べています


設置時にさかのぼって支払わなくてはならないとの点に関しては、契約・徴収を管轄する 砂押宏行 営業局長は、「例えば 20年前から設置していますという申告があれば、公平負担の観点から払っていただくことになる」との原則を説明する一方、「基本的にはお客様から設置の日を確認して契約を締結する」と話し、期間は視聴者の申告を基準にする考えを示しました

また、砂押営業局長は、契約・徴収業務を委託している業者や個人に対し、最高裁判決の出た 2017年12月6日中に、「判決は出たが、丁寧な説明を必ずやる。錦の御旗のようにして説明がおろそかにならないよう文書を出した」と説明しました



男性側弁護団は 「大山鳴動して鼠一匹」 「理不尽な判決」 受信料徴収強化を懸念



最高裁判決を受け、NHKに訴えられた男性の弁護団は東京都内で記者会見し、今回の判決を「理不尽な判決だ」とし、弁護団代表の高池勝彦弁護士は、「判決は『国民が受信料で争うことを許さない』と示しただけ」、「受信料制度の改革には寄与しない」と指摘、受信料徴収が強化される事態への懸念も示しました

(筆者補足 : 現在でも増え続けている NHK受信料徴収 をめぐるトラブルがさらに激増するかも知れません 「 NHK 強引な取り立て 時効分まで 消費生活センター相談件数 10年で4倍 」 参照)


最高裁は、受信契約の承諾を命じる判決が確定するまで、未払い分の「時効」はスタートしないと判断しており、尾崎幸広弁護士は、「テレビを設置した 50年前までさかのぼって受信料の支払い義務があることを是認する内容だ」とし、テレビを多数設置するホテルなどは負担が大きくなる可能性があると指摘し、「つぶれる所も出てくるかもしれない。非常に理不尽だ」と批判しています

弁護団によると、NHK内の審議会では、インターネットによる番組放送についても、スマートフォンなどを所有した時点からの支払いを求めることが議論されているということで、弁護団は、「看過できない。旧態依然とした制度でいいのか。ネット時代にふさわしい立法を国民が求めていくべきだ」と訴えています



放送法 64条1項 とは



放送法64条1項は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備…を設置した者については、この限りでない」と定めています

違反しても罰則はなく、受信料の支払い義務も規定されておらず、支払い義務や受信料の額は、契約者に適用されるNHKの「放送受信規約」でのみ定められています

参照 「 NHKの受信が目的でなければ支払う必要ありません 放送法第64条1項



最高裁判例

最高裁判所判例集について
最高裁判所判例集には,最近の主な最高裁判所の判決等や,最高裁判所民事判例集及び最高裁判所刑事判例集並びに最高裁判所裁判集民事及び最高裁判所裁判集刑事に登載された判決等が掲載されています 「 各判例について 」 より
事件番号 平成26(オ)1130
事件名 受信契約締結承諾等請求事件
裁判年月日 平成29年12月6日
法廷名 最高裁判所大法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成25(ネ)6245
原審裁判年月日 平成26年4月23日
判示事項  1 放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,その者に対して承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が成立する
 2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない
 3 受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する
 4 受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効は,受信契約成立時から進行する
裁判要旨
参照法条
全文 PDF 全文 (下記掲載)

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面 」 より




受信契約締結承諾等請求事件 最高裁 判決 全文 2017年12月6日



以下に、本事案「受信契約締結承諾等請求事件」の最高裁 大法廷判決 (2017年12月6日) 全文を掲載してあります (下線は、原文に引かれていた状態そのままですが、タイトル部分の文字色は、見やすくするため、本ページにて彩色したものです)


平成26年(オ)第1130号,平成26年(受)第1440号,第1441号
受信契約締結承諾等請求事件
平成29年12月6日 大法廷判決

主 文
本件各上告を棄却する。
各上告費用は各上告人の負担とする。
理 由

 第1 事案の概要

 1 本件は,平成26年(オ)第1130号・同年(受)第1440号被上告人兼同年(受)第1441号上告人(以下「原告」という。)が,原告の放送を受信することのできる受信設備(以下,単に「受信設備」ということがある。)を設置していながら原告との間でその放送の受信についての契約(以下「受信契約」とい
う。)を締結していない平成26年(オ)第1130号・同年(受)第1440号上告人兼同年(受)第1441号被上告人(以下「被告」という。)に対し,受信料の支払等を求める事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要等(公知の事実を含む。)は,次のとおりである。
 (1) 放送法に基づく原告に係る制度の概要等
 ア 原告は,放送法により設立された法人であり(同法16条),「公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信できるように豊かで,かつ,良い放送番組による国内基幹放送(中略)を行うとともに,放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い,あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うこと」(同法15条)を目的としている。
 イ 放送法施行前(以下「旧法下」という。)においては,我が国では,大正15年に社団法人日本放送協会が設立された後は,同協会のみが放送を行っていたところ,放送の受信設備(聴取無線電話)は,政府の監理統制する無線電話の一種として,無線電信法2条により,その設置に主務大臣の許可を要することとされていた。そして,放送用私設無線電話規則13条により,放送の受信設備の設置の許可を受けるためには,許可願書と共に放送施設者(社団法人日本放送協会)に対する聴取契約書を差し出さなければならないものとされていた。また,無線電信法には,許可なく無線電話等を設置した者に対する罰則規定も設けられていた。このような制度の下で,放送の受信設備を設置した者は,聴取契約に基づいて社団法人日本放送協会に聴取料を支払い,同協会は,聴取料を基本的な財源として放送事業を行っていた。
 上記の無線電話の設置の許可基準は法定されておらず,また,放送事業は,政府の監督下に置かれ,番組内容についても,検閲等の取締りが行われていた。
 ウ 昭和25年に,電波法,放送法及び電波監理委員会設置法が制定・施行されるとともに,無線電信法が廃止され,放送の受信設備の設置に許可を要しないこととなった。そして,放送法は,我が国における放送事業につき,「公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする」(制定当時の放送法7条)公共放送事業者によるものと,それ以外の一般放送事業者(同法第3章。以下「民間放送事業者」という。)によるものとの二本立て体制を採ることとし,前者を,社団法人日本放送協会の財産をそのまま引き継いで同法により設立される特殊法人である原告に担わせることとして,原告の業務,運営体制等に関する規定(同法第2章)を設けた。なお,原告の目的,業務,運営体制等に関する規定については,その後数次の改正がされ,現在は,後記カのとおりとなっているが,公共の福祉のために放送を行うことが原告の基本的な目的とされ,その目的を達成するための業務内容が法定されていること,原告の最高意思決定機関として経営委員会が設けられ,その委員の任命方法,資格要件等につき後記カのような定めがあること,原告を代表しその業務を総理する会長は経営委員会により任命され,原告の重要業務の執行について審議する理事会等が設けられていること,原告の収支予算等,業務報告書及び財産目録等は内閣を経て国会に提出等されるものとなっていることなど,基本的なものは,制定当時から定められていた。
 放送法制定の際の国会審議においては,このような二本立て体制を採ることにつき,政府委員から,「わが国の放送事業の事業形態を,全国津々浦々に至るまであまねく放送を聴取できるように放送設備を施設しまして,全国民の要望を満たすような放送番組を放送する任務を持ちます国民的な公共的な放送企業体と,個人の創意とくふうとにより自由闊達に放送文化を建設高揚する自由な事業としての文化放送企業体,いわゆる一般放送局または民間放送局というものでありますが,それとの二本建としまして,おのおのその長所を発揮するとともに,互いに他を啓蒙し,おのおのその欠点を補い,放送により国民が十分福祉を享受できるようにはかっているのでございます。」(昭和25年1月24日第7回国会衆議院電気通信委員会議録第1号20頁)などとする説明がされている。
 エ 原告の事業運営の財源に関し,放送法は,原告の放送を受信することのできる受信設備を設置した者(以下「受信設備設置者」という。)が支払う受信料によって賄うこととして,「協会の標準放送(中略)を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」(制定当時の放送法32条1項本文)と規定し,原告が営利を目的として業務を行
うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止した(同法9条3項,46条1項)。現行の放送法64条1項本文は,上記の制定当時の放送法32条1項本文の規定を引き継いだものである(以下,制定当時の放送法32条1項と現行の放送法64条1項とを区別せず「放送法64条1項」ということがある。)。
 放送法に,受信設備設置者は原告と受信契約を締結しなければならない旨の規定を設けることについて,同法制定の際の国会審議においては,政府委員から,「受信機の許可ということをはずしたのであります。そうなって参りますと,一方において無料の放送ができて来るということになると,日本放送協会がここに何らか法律的な根拠がなければ,その聴取料の徴収を継続して行くということが,おそらく不可能になるだろうということは予想されるのでありまして,ここに先ほどお話いたしましたように,強制的に国民と日本放送協会の間に,聴取契約を結ばなければならないという条項が必要になって来る。」(昭和25年2月2日第7回国会衆議院電気通信委員会議録第4号6頁)などとする説明がされている。
 オ 放送法は,昭和25年5月2日に公布され,一部の附則を除き同年6月1日から施行された。昭和26年9月には,民間放送事業者による放送(以下「民間放送」という。)が開始され,民間放送は広告収入等を財源として行われ,受信設備設置者は,民間放送事業者に対する金銭的な負担なく,民間放送を受信することができることとなった。
 カ 原告の目的,業務,運営体制等に関する規定は,放送法制定後数次にわたり改正がされ,現在の原告の目的,業務,運営体制等の概要は,次のとおりである。
 (ア) 前記アのとおり,原告は,あまねく日本全国において受信できるように国内基幹放送を行うことをその目的の一つとしており(放送法15条),総務大臣の認可を受けなければ,その基幹放送局若しくはその放送の業務を廃止し,又はその放送を12時間以上休止することができない(同法86条1項)。また,原告は,災害対策基本法における指定公共機関として,国等による防災計画の作成及び実施
が円滑に行われるように協力する責務を有する(同法2条5号,6条,昭和37年総理府告示第26号)。
 原告は,豊かで,かつ,良い放送番組による国内基幹放送を行うこともその目的としており(放送法15条),公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように最大の努力を払うこと(同法81条1項1号),全国向けの放送番組のほか地方向けの放送番組を有するようにすること(同項2号),我が国の過去の優れた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにすること(同項3号)が求められている。そして,原告は,公衆の要望を知るために世論調査を行うことを義務付けられている(同条2項)。
 原告の目的には,放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行うことも含まれ(放送法15条),原告は,放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うことをその業務としている(同法20条1項3号)。
 さらに,原告の目的には,国際放送等を行うことも含まれており(放送法15条),原告は,邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送を行うことなどもその業務としている(同法20条1項4号,5号)。
 (イ) 原告の運営体制については,経営に関する基本方針等の重要な意思決定等を行う機関である経営委員会が設けられ(放送法第3章第3節),その委員は,公共の福祉に関し公正な判断をすることができ,広い経験と知識を有する者のうちから,両議院の同意を得て,内閣総理大臣が任命することとし,その選任については,教育,文化,科学,産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならないものとされ,政治的中立性及び特定の利害からの独立性を確保するための欠格事由が定められている(同法31条)。
 原告を代表し,経営委員会の定めるところに従いその業務を総理する会長は,経営委員会がこれを任命するものとし,経営委員会の同意を得て会長が任命する副会長及び理事が置かれ(放送法51条,52条),これらの者によって理事会が構成され,理事会は,定款の定めるところにより,原告の重要業務の執行について審議する(同法50条)。また,役員の職務の執行を監査する監査委員会が設けられ(同法第3章第4節),監査委員は,経営委員会の委員の中から経営委員会により任命されることとなっている(同法42条)。
 (ウ) 原告の財務及び会計については,原告は,毎事業年度の収支予算,事業計画及び資金計画,業務報告書並びに財産目録,貸借対照表及び損益計算書等の財務諸表を作成し,総務大臣に提出しなければならないものとされ,これらは,内閣を経て国会に提出等されることとなっている(放送法70条1項,2項,72条1項,2項,74条1項から3項まで)。
 (エ) 原告の事業運営の基本的な財源は,前記エのとおり,受信設備設置者が受信契約に基づき支払う受信料(放送法64条)であり,原告は,営利を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止されている(同法20条4項,83条1項)。
 受信料の月額は,国会が,原告の毎事業年度の収支予算を承認することによって定めるものとされている(放送法70条4項)。
 原告は,受信契約の条項については,あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならないものとされ(放送法64条3項),総務大臣は,受信契約条項の認可について電波監理審議会に諮問しなければならないものとされている(同法177条1項2号)。そして,放送法施行規則23条は,受信契約の条項には,少なくとも,受信契約の締結方法(1号),受信契約の単位(2号),受信料の徴収方法(3号),受信契約者の表示に関すること(4号),受信契約の解約及び受信契約者の名義又は住所変更の手続(5号),受信料の免除に関すること(6号),受信契約の締結を怠った場合及び受信料の支払を延滞した場合における受信料の追徴方法(7号),原告の免責事項及び責任事項(8号),契約条項の周知方法(9号)を定めるものと規定している。
 キ 原告は,「日本放送協会放送受信規約」(以下「放送受信規約」という。)を策定し(放送法29条1項1号ヌにより,受信契約の条項は,経営委員会の議決事項とされている。),同法64条3項に従いあらかじめ総務大臣の認可を受けて,これを受信契約の条項として用いている。
 放送受信規約には,次の内容の条項が含まれている(放送受信規約は,受信契約の種別,受信料額及びその支払方法の変更等による改定が重ねられており,本件に関わる時期において改定されているものについては,時期を区別して記載する。)。
 (ア) 受信契約の種別(第1条)
 ① 平成17年4月1日から平成19年9月30日まで
 受信設備のうち,衛星系によるテレビジョン放送を受信することのできるカラーテレビジョン受信設備を設置した者は,衛星カラー契約(衛星系及び地上系によるテレビジョン放送のカラー受信を含む受信契約)を締結しなければならない。
 ② 平成19年10月1日以降
 受信設備のうち,衛星系によるテレビジョン放送を受信することのできるテレビ
ジョン受信設備を設置した者は,衛星契約(衛星系及び地上系によるテレビジョン
放送の受信についての受信契約)を締結しなければならない。
 (イ) 受信料支払の義務(第5条)
 受信契約者は,受信設備の設置の月から,1の受信契約につき,次の額の受信料(消費税及び地方消費税を含む。)を支払わなければならない。
 ① 平成17年4月1日から平成19年9月30日まで
 衛星カラー契約については,訪問集金(口座振替等以外の方法による支払)では月額2340円。
 ② 平成19年10月1日から平成20年9月30日まで
 衛星契約については,訪問集金では月額2340円。
 ③ 平成20年10月1日から平成24年9月30日まで
 衛星契約については,月額2290円。
 ④ 平成24年10月1日以降
 衛星契約については,継続振込その他の方法による支払(口座振替又はクレジッ
トカード等継続払を除く。)では月額2220円。
 (ウ) 受信料の支払方法(第6条)
 受信料の支払は,次の各期に,当該期分を一括して行わなければならない。
 第1期 4月及び5月
 第2期 6月及び7月
 第3期 8月及び9月
 第4期 10月及び11月
 第5期 12月及び1月
 第6期 2月及び3月
 ク 放送法施行後60年以上にわたり,原告は,同法に基づき業務を行ってきたが,近時に至るまで,受信契約の締結に応じない者に対して本件訴訟におけるような強制的な手段に及ぶことはなく,受信設備設置者との間で任意に締結された受信契約に基づいて受信料を収受してきた。原告が推計し公表するところによれば,受信契約の契約率は,平成28年度末において約8割である。
 (2) 被告による受信設備の設置等
 被告は,平成18年3月22日以降,その住居に,原告の衛星系によるテレビジョン放送を受信することのできるカラーテレビジョン受信設備を設置している。
 原告は,平成23年9月21日到達の書面により,被告に対し,受信契約の申込みをしたが,被告は,上記申込みに対して承諾をしていない。
 3 原告の請求は,被告に対し,①主位的請求として,放送法64条1項により,原告による受信契約の申込みが被告に到達した時点で受信契約が成立したと主張して,受信設備設置の月の翌月である平成18年4月分から平成26年1月分までの受信料合計21万5640円の支払を求め,②予備的請求1として,被告は同項に基づき受信契約の締結義務を負うのにその履行を遅滞していると主張して,債
務不履行に基づく損害賠償として上記同額の支払を求め,③予備的請求2として,被告は同項に基づき原告からの受信契約の申込みを承諾する義務があると主張して,当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料として上記同額の支払を求め,④予備的請求3として,被告は受信契約を締結しないことにより,法律上の原因なく原告の損失により受信料相当額を利得していると主張して,不当利得返還請求として上記同額の支払を求めるものである。
 これに対し,被告は,放送法64条1項は,訓示規定であって,受信設備設置者に原告との受信契約の締結を強制する規定ではないと主張し,仮に同項が受信設備設置者に原告との受信契約の締結を強制する規定であるとすれば,受信設備設置者の契約の自由,知る権利,財産権等を侵害し,憲法13条,21条,29条等に違反すると主張するほか,受信契約により発生する受信料債権の範囲を争うとともに,その一部につき時効消滅を主張して争っている。

 第2 平成26年(オ)第1130号・同年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告理由及び上告受理申立て理由第2の4並びに平成26年(受)第1441号上告代理人永野剛志ほかの上告受理申立て理由について

 1 放送法64条1項の意義

 (1)ア 放送は,憲法21条が規定する表現の自由の保障の下で,国民の知る権利を実質的に充足し,健全な民主主義の発達に寄与するものとして,国民に広く普及されるべきものである。放送法が,「放送が国民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること」,「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」及び「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって,放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」という原則に従って,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ることを目的として(1条)制定されたのは,上記のような放送の意義を反映したものにほかならない。
 上記の目的を実現するため,放送法は,前記のとおり,旧法下において社団法人日本放送協会のみが行っていた放送事業について,公共放送事業者と民間放送事業者とが,各々その長所を発揮するとともに,互いに他を啓もうし,各々その欠点を補い,放送により国民が十分福祉を享受することができるように図るべく,二本立て体制を採ることとしたものである。そして,同法は,二本立て体制の一方を担う公共放送事業者として原告を設立することとし,その目的,業務,運営体制等を前記のように定め,原告を,民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体として性格付け,これに公共の福祉のための放送を行わせることとしたものである。
 放送法が,前記のとおり,原告につき,営利を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止し(20条4項,83条1項),事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは,原告が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものである。すなわち,上記の財源についての仕組みは,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が原告に及ぶことのないようにし,現実に原告の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置することにより原告の放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求めることによって,原告が上記の者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものにほかならない。
 原告の存立の意義及び原告の事業運営の財源を受信料によって賄うこととしている趣旨が,前記のとおり,国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的とし,そのために必要かつ合理的な仕組みを形作ろうとするものであることに加え,前記のとおり,放送法の制定・施行に際しては,旧法下において実質的に聴取契約の締結を強制するものであった受信設備設置の許可制度が廃止されるものとされていたことをも踏まえると,放送法64条1項は,原告の財政的基盤を確保するための法的に実効性のある手段として設けられたものと解されるのであり,法的強制力を持たない規定として定められたとみるのは困難である。
 イ そして,放送法64条1項が,受信設備設置者は原告と「その放送の受信についての契約をしなければならない」と規定していることからすると,放送法は,受信料の支払義務を,受信設備を設置することのみによって発生させたり,原告から受信設備設置者への一方的な申込みによって発生させたりするのではなく,受信契約の締結,すなわち原告と受信設備設置者との間の合意によって発生させることとしたものであることは明らかといえる。これは,旧法下において放送の受信設備を設置した者が社団法人日本放送協会との間で聴取契約を締結して聴取料を支払っていたこととの連続性を企図したものとうかがわれるところ,前記のとおり,旧法下において実質的に聴取契約の締結を強制するものであった受信設備設置の許可制度が廃止されることから,受信設備設置者に対し,原告との受信契約の締結を強制するための規定として放送法64条1項が設けられたものと解される。同法自体に受信契約の締結の強制を実現する具体的な手続は規定されていないが,民法上,法律行為を目的とする債務については裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる旨が規定されており(同法414条2項ただし書),放送法制定当時の民事訴訟法上,債務者に意思表示をすべきことを命ずる判決の確定をもって当該意思表示をしたものとみなす旨が規定されていたのであるから(同法736条。民事執行法174条1項本文と同旨),放送法64条1項の受信契約の締結の強制は,上記の民法及び民事訴訟法の各規定により実現されるものとして規定されたと解するのが相当である。
 この点に関し,原告は,受信設備を設置しながら受信契約の締結に応じない者に対して原告が承諾の意思表示を命ずる判決を得なければ受信料を徴収することができないとすることは,迂遠な手続を強いるものであるとして,原告から受信設備設置者への受信契約の申込みが到達した時点で,あるいは遅くとも申込みの到達時から相当期間が経過した時点で,受信契約が成立する旨を主張する(主位的請求に係る主張)。
 しかし,放送法による二本立て体制の下での公共放送を担う原告の財政的基盤を安定的に確保するためには,基本的には,原告が,受信設備設置者に対し,同法に定められた原告の目的,業務内容等を説明するなどして,受信契約の締結に理解が得られるように努め,これに応じて受信契約を締結する受信設備設置者に支えられて運営されていくことが望ましい。そして,現に,前記のとおり,同法施行後長期間にわたり,原告は,受信設備設置者から受信契約締結の承諾を得て受信料を収受してきたところ,それらの受信契約が双方の意思表示の合致により成立したものであることは明らかである。同法は,任意に受信契約を締結しない者について契約を成立させる方法につき特別な規定を設けていないのであるから,任意に受信契約を締結しない者との間においても,受信契約の成立には双方の意思表示の合致が必要というべきである。
 ウ ところで,受信契約の締結を強制するに当たり,放送法には,その契約の内容が定められておらず,一方当事者たる原告が策定する放送受信規約によって定められることとなっている点は,問題となり得る。
 しかし,受信契約の最も重要な要素である受信料額については,国会が原告の毎事業年度の収支予算を承認することによって定めるものとされ(放送法70条4項),また,受信契約の条項はあらかじめ総務大臣(同法制定当時においては電波監理委員会)の認可を受けなければならないものとされ(同法64条3項。同法制定当時においては32条3項),総務大臣は,その認可について電波監理審議会に諮問しなければならないものとされているのであって(同法177条1項2号),同法は,このようにして定まる受信契約の内容が,同法に定められた原告の目的にかなうものであることを予定していることは明らかである。同法には,受信契約の条項についての総務大臣の認可の基準を定めた規定がないとはいえ,前記のとおり,放送法施行規則23条が,受信契約の条項には,少なくとも,受信契約の締結方法,受信契約の単位,受信料の徴収方法等の事項を定めるものと規定しており,原告の策定した放送受信規約に,これらの事項に関する条項が明確に定められ,その内容が前記の受信契約の締結強制の趣旨に照らして適正なものであり,受信設備設置者間の公平が図られていることが求められる仕組みとなっている。また,上記以外の事項に関する条項は,適正・公平な受信料徴収のために必要なものに限られると解される。
 本訴請求に関する放送受信規約の各条項(前記第1の2(1)キ)は,放送法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な範囲内のものといえる。
 (2) 以上によると,放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。
 (3) 原告は,受信設備設置者が放送法64条1項に基づく受信契約の締結義務を受信設備設置後速やかに履行しないことは履行遅滞に当たるから,原告は受信設備設置者に対し受信料相当額の損害賠償を求めることができる旨を主張するが(予備的請求1に係る主張),後記のとおり,原告が策定し受信契約の内容としている放送受信規約によって受信契約の成立により受信設備の設置の月からの受信料債権が発生すると認められるのであるから,受信設備設置者が受信契約の締結を遅滞することにより原告に受信料相当額の損害が発生するとはいえない。また,放送法が受信契約の締結によって受信料の支払義務を発生させることとした以上,原告が受信設備設置者との間で受信契約を締結することを要しないで受信料を徴収することができるのに等しい結果となることを認めることは相当でない。

 2 放送法64条1項の憲法適合性について

 (1) 被告の論旨は,受信設備設置者に受信契約の締結を強制する放送法64条1項は,契約の自由,知る権利及び財産権等を侵害し,憲法13条,21条,29条に違反する旨をいう。その趣旨は,①受信設備を設置することが必ずしも原告の放送を受信することにはならないにもかかわらず,受信設備設置者が原告に対し必ず受信料を支払わなければならないとするのは不当であり,また,金銭的な負担なく受信することのできる民間放送を視聴する自由に対する制約にもなっている旨及び②受信料の支払義務を生じさせる受信契約の締結を強制し,かつ,その契約の内容は法定されておらず,原告が策定する放送受信規約によって定まる点で,契約自由の原則に反する旨をいうものと解される。
 上記①は,放送法が,原告を存立させてその財政的基盤を受信設備設置者に負担させる受信料により確保するものとしていることが憲法上許容されるかという問題であり,上記②は,上記①が許容されるとした場合に,受信料を負担させるに当たって受信契約の締結強制という方法を採ることが憲法上許容されるかという問題であるといえる。
 (2) 電波を用いて行われる放送は,電波が有限であって国際的に割り当てられた範囲内で公平かつ能率的にその利用を確保する必要などから,放送局も無線局の一つとしてその開設につき免許制とするなど(電波法4条参照),元来,国による一定の規律を要するものとされてきたといえる。前記のとおり,旧法下においては,我が国では,放送は,無線電信法中の無線電話の一種として規律されていたにすぎず,また,放送事業及び放送の受信は,行政権の広範な自由裁量によって監理統制されるものであったため,日本国憲法下において,このような状態を改めるべきこととなったが,具体的にいかなる制度を構築するのが適切であるかについては,憲法上一義的に定まるものではなく,憲法21条の趣旨を具体化する前記の放送法の目的を実現するのにふさわしい制度を,国会において検討して定めることとなり,そこには,その意味での立法裁量が認められてしかるべきであるといえる。
 そして,公共放送事業者と民間放送事業者との二本立て体制の下において,前者を担うものとして原告を存立させ,これを民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体たらしめるためその財政的基盤を受信設備設置者に受信料を負担させることにより確保するものとした仕組みは,前記のとおり,憲法21条の保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され,その目的にかなう合理的なものであると解されるのであり,かつ,放送をめぐる環境の変化が生じつつあるとしても,なおその合理性が今日までに失われたとする事情も見いだせないのであるから,これが憲法上許容される立法裁量の範囲内にあることは,明らかというべきである。このような制度の枠を離れて被告が受信設備を用いて放送を視聴する自由が憲法上保障されていると解することはできない。
 (3) 放送法は,受信設備設置者に受信料を負担させる具体的な方法として,前記のとおり,受信料の支払義務は受信契約により発生するものとし,任意に受信契約を締結しない受信設備設置者については,最終的には,承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって強制的に受信契約を成立させるものとしている。
 受信料の支払義務を受信契約により発生させることとするのは,前記のとおり,原告が,基本的には,受信設備設置者の理解を得て,その負担により支えられて存立することが期待される事業体であることに沿うものであり,現に,放送法施行後長期間にわたり,原告が,任意に締結された受信契約に基づいて受信料を収受することによって存立し,同法の目的の達成のための業務を遂行してきたことからも,相当な方法であるといえる。
 任意に受信契約を締結しない者に対してその締結を強制するに当たり,放送法には,締結を強制する契約の内容が定められておらず,一方当事者たる原告が策定する放送受信規約によってその内容が定められることとなっている点については,前記のとおり,同法が予定している受信契約の内容は,同法に定められた原告の目的にかなうものとして,受信契約の締結強制の趣旨に照らして適正なもので受信設備設置者間の公平が図られていることを要するものであり,放送法64条1項は,受信設備設置者に対し,上記のような内容の受信契約の締結を強制するにとどまると解されるから,前記の同法の目的を達成するのに必要かつ合理的な範囲内のものとして,憲法上許容されるというべきである。
 (4) 以上によると,放送法64条1項は,同法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反するものではないというべきである。
 その余の上告理由は,違憲をいうが,その前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
 3 以上によれば,所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨はいずれも採用することができない。

 第3 平成26年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告受理申立て理由第2の2について

 1 論旨は,被告に対して受信契約の承諾の意思表示を命ずる判決が確定することにより受信契約が成立した場合に発生する受信料債権は,当該契約の成立時以降の分であり,受信設備の設置の月以降の分ではない旨をいうものである。
 2 放送受信規約には,前記のとおり,受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項(第1の2(1)キ(イ))がある。前記のとおり,受信料は,受信設備設置者から広く公平に徴収されるべきものであるところ,同じ時期に受信設備を設置しながら,放送法64条1項に従い設置後速やかに受信契約を締結した者と,その締結を遅延した者との間で,支払うべき受信料の範囲に差異が生ずるのは公平とはいえないから,受信契約の成立によって受信設備の設置の月からの受信料債権が生ずるものとする上記条項は,受信設備設置者間の公平を図る上で必要かつ合理的であり,放送法の目的に沿うものといえる。
 したがって,上記条項を含む受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するというべきである。
所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。

 第4 平成26年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告受理申立て理由第2の1について

 1 受信料が月額又は6箇月若しくは12箇月前払額で定められ,その支払方法が2箇月ごとの各期に当該期分を一括して支払う方法又は6箇月分若しくは12箇月分を一括して前払する方法によるものとされている受信契約に基づく受信料債権の消滅時効期間は,民法169条により5年と解すべきであるところ(最高裁平成25年(受)第2024号同26年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁参照),論旨は,受信契約の成立によって,前記第3のとおり,受信設備設置の月以降の分の受信料債権が発生する場合,当該受信料債権の消滅時効は,受信契約上の本来の各履行期から進行し,本訴請求に係る受信料債権のうち一部については時効消滅している旨をいうものである。
 2 消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)ところ,受信料債権は受信契約に基づき発生するものであるから,受信契約が成立する前においては,原告は,受信料債権を行使することができないといえる。この点,原告は,受信契約を締結していない受信設備設置者に対し,受信契約を締結するよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料を請求す
ることができることからすると,受信設備を設置しながら受信料を支払っていない者のうち,受信契約を締結している者については受信料債権が時効消滅する余地があり,受信契約を締結していない者についてはその余地がないということになるのは,不均衡であるようにも見える。しかし,通常は,受信設備設置者が原告に対し受信設備を設置した旨を通知しない限り,原告が受信設備設置者の存在を速やかに把握することは困難であると考えられ,他方,受信設備設置者は放送法64条1項により受信契約を締結する義務を負うのであるから,受信契約を締結していない者について,これを締結した者と異なり,受信料債権が時効消滅する余地がないのもやむを得ないというべきである。
 したがって,受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,受信契約成立時から進行するものと解するのが相当である。
 所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。

 第5 結論

 以上によれば,原告の請求のうち予備的請求2を認容すべきものとした原審の判断は,是認することができるから,本件各上告を棄却することとする。
 よって,裁判官木内道祥の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官岡部喜代子,同鬼丸かおるの各補足意見,裁判官小池裕,同菅野博之の補足意見がある。

 裁判官岡部喜代子の補足意見は,次のとおりである。

 被告は,放送法64条1項は訓示規定であると主張し,また,これを訓示規定と解さなければ憲法に違反すると主張するので,その点について補足する。
 多数意見の見解は,放送法64条1項の規定によって原告に私法上の権利である受信契約承諾請求権が発生すると解するものといえる。放送法は,主に原告その他の放送主体の組織及び業務について規定しており,公法であると性格付けられるものである。しかし,公法であっても私権の発生要件について規定することもあり得るところであり,放送法内において受信契約の締結を強制する具体的な方法についての規定がないことが,強制力のないことを理由付けるものではない。放送法の規定中に受信契約締結義務が定められたのは,同法の立法に至る経過において,原告の財政基盤確保の方法が変遷したことによるものである。その規定を読めば,①受信設備を設置したこと,②原告による受信契約申込みの意思表示がなされたことという二つの要件を充足することによって,原告が当該受信設備を設置した者に対して受信契約承諾請求権を取得することになると理解できる。
 原告がその取得した受信契約承諾請求権を行使しても相手方が承諾しないときには,民法414条2項ただし書の規定によって意思表示を求める訴訟を提起することができる。そして,判決の確定によって承諾の意思表示をしたものとみなされたときに受信契約が成立する。放送受信規約第4条第1項は,受信契約は受信設備設置の日に成立するものとする旨を規定しているところ,その趣旨は,受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が,意思表示の合致の日に成立する旨を述べていると解すべきである。また,放送法64条1項が,受信契約承諾請求権の発生要件として「受信設備を設置した者」と規定していて「受信している者」と規定していないことからすれば,受信設備を設置して受信することができる地位にあることによって受信料を支払う義務を負うことになるものといえる。
 このように,放送法64条1項は,原告の放送を受信しない者ないし受信したくない者に対しても受信契約の締結及び受信料の支払を強制するものと解されるところ,被告は,そのような放送法64条1項は憲法に違反すると主張する。憲法は表現の自由の派生原理として情報摂取の自由を認めている(最高裁昭和63年(オ)第436号平成元年3月8日大法廷判決・民集43巻2号89頁参照)。情報摂取の自由には,情報を摂取しない自由(情報を摂取することを強制されない自由)を含むものと解することができる。被告は,このような情報摂取の自由について明確に主張するものではなく,多数意見もこれに触れるものではないが,放送法64条1項は,原告の放送の視聴を強制しているわけではないとはいえ,受信することができる地位にあることをもって経済的負担を及ぼすことになる点で,上記のような
情報摂取の自由に対する制約と見る余地もある。しかし,多数意見が判示するように,受信料制度は,国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的として形作られ,その目的のために,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が及ばないように必要かつ合理的な制度として認められたものであり,国民の知る権利の保障にとって重要な制度である。一方,受信設備を設置していれば,緊急時などの必要な時には原告の放送を視聴することのできる地位にはあるのであって,受信料の公平負担の趣旨からも,受信設備を設置した者に受信契約の締結を求めることは合理的といい得る。原告の独立した財政基盤を確保する重要性からすれば,上記のような経済的負担は合理的なものであって,放送法64条1項は,情報摂取の自由との関係で見ても,憲法に違反するとはいえない。

 裁判官鬼丸かおるの補足意見は,次のとおりである。

 私は,多数意見と同意見であるが,以下の点を補足したい。
 放送法64条1項は,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定しているが,その契約の内容は,原告の策定する放送受信規約により定められている。受信契約の締結が強制されるべきであることは多数意見のとおりであるところ,このことが契約締結の自由という私法の大原則の例外であり,また,締結義務者に受信料の支払という経済的負担をもたらすものであることを勘案すると,本来は,受信契約の内容を含めて法定されるのが望ましいものであろう。
 現に,放送受信規約の中には,受信契約の締結を強制するについて疑義を生じさせかねないものも含まれている。すなわち,放送受信規約第2条第1項は,「放送受信契約は,世帯ごとに行うものとする。」と定めて,原則として世帯を単位として契約を締結することとしているが,これは,放送法64条1項の規定から直ちに導かれるとはいい難い。さらに,放送受信規約は,受信契約を世帯ごととしつつ
も,受信契約を締結する義務が世帯のうちいずれの者にあるかについて規定を置いていない。任意に受信契約が締結される場合は別であるが,受信契約の締結が強制される場合には,締結義務を負う者を明文で特定していないことには問題があろう。家族のあり方や居住態様が多様化している今日,世帯が受信契約の単位であるとの規定は,直ちに1戸の家屋に所在する誰かを締結義務者であると確定することにならない場合もあると思われる。受信契約の締結を求められる側からみても,その義務を負う者が法令上一義的に特定できなければ,締結義務を負っていることの自覚も困難であろう。

 裁判官小池裕,同菅野博之の補足意見は,次のとおりである。

 私たちは,多数意見に賛同するものであるが,放送法64条1項の意義に関し,木内裁判官が反対意見で触れられている点について,補足的に意見を述べておきたい。
 多数意見が,民事執行法174条1項本文により承諾の意思表示を命ずる判決の確定時に受信契約が成立するとしつつ,受信設備の設置の月からの受信料を支払う義務が生ずるものとしていることについて,問題がある旨の指摘がされているが,この点については,岡部裁判官の補足意見で述べられているとおり,上記判決の確定により「受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約」が,上記判決の確定の時(意思表示の合致の時)に成立するのであって,受信設備の設置という過去の時点における承諾を命じたり,承諾の効力発生時期を遡及させたりするものではない。放送受信規約第4条第1項は,上記のような趣旨と解されるのであり,承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約を成立させることの障害になるものではない。
 また,受信設備を廃止した場合の問題点も指摘されるが,過去に受信設備を設置したことにより,それ以降の期間について受信契約を締結しなければならない義務は既に発生しているのであるから,受信設備を廃止するまでの期間についての受信契約の締結を強制することができると解することは十分に可能であると考える。
 さらに,不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を認めるとの考え方が示されているところ,このような構成は,受信契約の締結に応じない受信設備設置者からも受信料に相当する額を徴収することができるようにするためのものであると考えられる。しかし,不当利得構成については,受信設備を設置することから直ちにその設置者に受信料相当額の利得が生じるといえるのか疑問である上,受信契約の成立を前提とせずに原告にこれに対応する損失が生じているとするのは困難であろう。不法行為構成については,受信設備の設置行為をもって原告に対する加害行為と捉えるものといえ,公共放送の目的や性質にそぐわない法律構成ではなかろうか。また,上記のような構成が認められるものとすると,任意の受信契約の締結がなくても受信料相当額を収受することができることになり,放送法64条1項が受信契約の締結によって受信料が支払われるものとした趣旨に反するように思わ
れる。反対意見には傾聴すべき点が存するが,放送法は,原告の財政的基盤は,原告が受信設備設置者の理解を得て受信契約を締結して受信料を支払ってもらうことにより確保されることを基本としているものと考えられるのであり,受信契約の締結なく受信料相当額の徴収を可能とする構成を採っていない多数意見の考え方が放送法の趣旨に沿うものと考える。

 裁判官木内道祥の反対意見は,次のとおりである。

 私は,放送法64条1項が定める契約締結義務については,多数意見と異なり,意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。以下,その理由を述べる。
 1 意思表示を命ずる判決をなしうる要件
 (1) 意思表示の内容の特定
 判決によって意思表示をすべきことを債務者に命ずるには,その意思表示の内容が特定されていることを要する。契約の承諾を命ずる判決が確定すると,承諾の意思表示がなされたものとみなされて契約が成立することになるが,1回の履行で終わらない継続的な契約においては,承諾を命じられた債務者は判決によってその契約関係に入っていくのであるから,承諾によって成立する契約の内容が特定していないまま,判決が債務者の意思表示の代行をなしうるものではない。
 (2) 意思表示の効力発生時期
 判決が命じた意思表示の効力発生時期が判決の確定時であることは,民事執行法174条が定めており,これと異なる効力発生時期を意思表示を命ずる判決に求めることはできない。
 2 放送受信規約の定める受信契約の内容
 放送法は受信契約の内容を定めておらず,原告の定める放送受信規約がその内容を定めている。そのことの当否は別として,放送受信規約の定める受信契約の内容は,次のようなものである。
 (1) 受信契約の種別と受信料(第1条第1項,第5条)
 受信契約には,3つの種別があり,1の受信契約につき,その種別ごとの受信料が定められている。
 (2) 受信契約の単位(第2条)
 受信設備が設置されるのが住居であれば,世帯が契約単位であり,1世帯で複数住居なら,住居ごとが単位となる。世帯とは,住居および生計をともにする者の集まり,または,独立して住居もしくは生計を維持する単身者である。
 事務所等の住居以外の場所に設置される受信設備については,設置場所が契約単位であり,設置場所の単位は,部屋,自動車などである。
 同一世帯の1の住居に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1であり,住居以外の場所では1の設置場所に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1である。
 (3) 受信契約書の提出義務(第3条)
 受信設備を設置した者は,遅滞なく,①設置者の氏名及び住所,②設置の日,③受信契約の種別,④受信できる放送の種類及び受信設備の数などを記載した受信契約書を原告に提出しなければならない。
 (4) 受信契約の成立(第4条第1項)
 受信契約は受信設備の設置の日に成立するものとする。
 (5) 受信契約の種別の変更(第4条第2項)
 受信契約の種別の変更については,受信設備の設置による変更は設置の日に,受信設備の廃止による変更は,その旨を記載した受信契約書の提出の日に,原告の確認を条件として,変更される。
 (6) 受信料支払義務の始期と終期(第5条第1項)
 受信契約者は,受信設備の設置の月から解約となった月の前月まで,受信料を支払わなければならない。
 (7) 受信契約の解約(第9条第1項,第2項)
 受信設備を廃止すると,受信契約者は,その旨の届出をしなければならない。原告が廃止を確認できると,届出があった日に解約されたものとする。
 3 放送受信規約の定めと意思表示を命ずる判決をなしうる要件の関係
 (1) 放送受信規約による契約内容の特定
 受信契約の承諾を命ずる判決には,承諾の対象となる契約の内容の特定が必要なところ,判決主文において明示するか否かを問わず,判決の時点における放送受信規約を内容とする受信契約の承諾を命ずることになる。そこで,放送受信規約の定めが,それ自体として,契約内容を特定するものとなっているのか否かが問題となる。
 (2) 放送受信規約による契約内容
 放送受信規約は,受信設備設置者が設置後遅滞なく前記2(3)の事項が記載された受信契約書を提出して受信契約が成立することを前提としている。そのようにして受信契約が締結される限り,受信契約が受信設備設置時に遡って成立すると合意することは可能であり,1世帯に複数の受信設備があり,受信設備の種類が異なっていても,提出された受信契約書の記載によって,契約主体,契約の種別を特定することは可能である。
 他方,以下の①~③で示されるとおり,判決によって受信契約を成立させようとしても,契約成立時点を受信設備設置時に遡及させること,また,判決が承諾を命ずるのに必要とされる契約内容(契約主体,契約の種別等)の特定を行うことはできず,受信設備を廃止した受信設備設置者に適切な対応をすることも不可能である。
 ① 契約の成立時点と受信料支払義務の始点
 意思表示を命ずる判決によって意思表示が効力を生ずるのは,民事執行法174条1項により,その判決の確定時と定められている。承諾を命ずる判決は過去の時点における承諾を命ずることはできないのであり,承諾が効力を生じ契約が成立するのは判決の確定時である。したがって,放送受信規約第4条第1項にいう受信設備設置の時点での受信契約の成立はありえない。
 受信料債権は定期給付債権である(最高裁平成25年(受)第2024号同26年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁)が,定期給付債権としての受信料債権を生ぜしめる定期金債権としての受信料債権は,受信契約によって生じ,その発生時点は判決の確定時である。受信契約が成立していなければ定期金債権としての受信料債権は存在せず,支分権としての受信料債権も生じない。したがって,放送受信規約第5条にいう受信設備の設置の月からの受信料支払義務の負担はありえない。
 ② 契約の主体と受信契約の種別の変更
 同一の世帯に夫婦と子がいる場合,放送受信規約第2条は,住居が1である限り,受信設備が複数設置されても受信契約は1とするが,夫婦と子のそれぞれが受信設備を設置しあるいは廃止すると,判決が承諾を命ずるべき者が誰なのかは,不明である。それぞれが設置した受信設備の種類が異なる場合,判決が承諾を命ずる契約の種別が何なのかも,不明である。
 ③ 受信設備を廃止した受信設備設置者との関係
 承諾を命ずる判決は,過去の時点における承諾を命ずることはできないのであるから,現時点で契約締結義務を負っていない者に対して承諾を命ずることはできない。受信契約を締結している受信設備設置者でも,受信設備を廃止してその届出をすれば,届出時点で受信契約は解約となり契約が終了する(放送受信規約第9条)ことと対比すると,既に受信設備を廃止した受信設備設置者が廃止の後の受信料支払義務を負うことはありえない。仮に,既に受信設備を廃止した受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば,受信設備の設置の時点からその廃止の時点までという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。これは,過去の事実を判決が創作するに等しく,到底,判決がなしうることではない。
 原告が受信設備設置者に対して承諾を求める訴訟を提起しても,口頭弁論終結の前に受信設備の廃止がなされると判決によって承諾を命ずることはできず,訴訟は受信設備の廃止によって無意味となるおそれがある。
 4 財源としての受信料の必要性と放送法64条の関係
 放送法の制定当時においても民事訴訟法736条が現行の民事執行法174条と同様の意思表示を命ずる判決を定めていたのであるから,放送法の制定にあたって,同法に定める受信契約の締結義務を,意思表示を命ずる判決によって受信契約が成立するものとし,それによって受信料を確保するものとする動機付けは存したかもしれないが,そのことと,実際に制定された放送法の定めが,受信契約の締結を判決により強制しうるものとされているか否かは,別問題である。
 受信契約の内容は放送受信規約によって定められ,その規約による受信契約の条項は電波監理審議会の諮問を経た総務大臣の認可を経ているのであるから,放送受信規約は放送法64条1項の趣旨を具体化したものとなっていると解されるが,その規約の内容が,判決によって承諾を命ずることができるものにはなっておらず,かえって,任意の契約締結を前提とするものとなっていることは,前項で述べたとおりであり,放送法64条1項は判決により受信契約の承諾を命じうる義務の定め方をしていないのである。
 5 判決によって成立する受信契約が発生させる受信料債権の範囲
 多数意見は,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する理由を,受信契約の締結を速やかに行った者と遅延した者の間の公平性に求めるが,これは,受信契約が任意に締結される限り受信料支払義務の始点を受信設備設置の月からとすることの合理性の理由にはなるものの,放送法の定めが判決が承諾を命じうる要件を備えたものとなっていることの理由になるものではない。
 契約の成立時を遡及させることができない以上,判決が契約前の時期の受信料の支払義務を生じさせるとすれば,それは,承諾の意思表示を命ずるのではなく義務負担を命ずることになる。これは,放送法が契約締結の義務を定めたものではあるが受信料支払義務を定めたものではないことに矛盾するものである。
 6 受信料債権の消滅時効の起算点
 多数意見は,判決により成立した受信契約による受信料債権の消滅時効の起算点を判決確定による受信契約成立時とし,任意の受信契約の締結に応じず,判決により承諾を命じられた者は受信料債権が時効消滅する余地がないものであってもやむを得ないとする。
 受信設備設置者は,多数意見のいうように,受信契約の締結義務を負いながらそれを履行していない者であるが,不法行為による損害賠償義務であっても行為時から20年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅し,不当利得による返還義務であっても発生から10年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅することと比較すると,およそ消滅時効により消滅することのない債務を負担するべき理由はない。
 7 放送法の契約締結義務の私法的意味
 放送法64条1項の定める受信契約の締結義務が判決により強制できないものであることは,なんら法的効力を有しないということではない。
 受信契約により生ずる受信料が原告の運営を支える財源であり,これが,原告について定める放送法の趣旨に由来することから契約締結義務が定められているのであるから,受信設備を設置する者に受信契約の締結義務が課せられていることは,「受信契約を締結せずに受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態が生じない」ことを原告の利益として法が認めているのであり,この原告の利益は「法律上保護される利益」(民法709条)ということができる。受信契約の締結なく受信設備を設置することは,この利益を侵害することになり,それに故意過失があれば,不法行為が成立し,それによって原告に生ずる損害については,受信設備設置者に損害賠償責任が認められると解される。
 同様に「受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態となること」は,受信設備設置者にとって,原告の役務による利益であり,受信契約という法律上の原因を欠くものである。それによって原告に及ぼされる損失については,受信設備設置者の不当利得返還義務が認められると解される。

(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官 山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 菅野博之 裁判官 山口 厚 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)

平成26(オ)1130 受信契約締結承諾等請求事件 平成29年12月6日 判決 全文 」 より





NHK 受信料 支払い義務か 最高裁 初の判断へ 放送法第64条1項 2016年11月2日



NHKとの受信契約を拒否した人に受信料の支払い義務があるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第 3小法廷(大谷剛彦裁判長)は、2016年11月2日、審理を最高裁 大法廷(裁判長 寺田逸郎長官)に回付しました

最高裁 大法廷は、最高裁の全裁判官 15人で審理され、憲法判断や判例変更を行う場合のほか、重要な論点が含まれる場合にも回付されます


最高裁 大法廷に回付されたのは、NHKが東京都の男性に受信料支払いを求めた訴訟で、男性側は、契約は義務ではないとした上で、「義務だとしたら憲法が保障する財産権などを侵害しており違憲」と指摘、NHK側は、「放送法(第64条1項)に基づきNHKからの申し込みが届いた時点で自動的に契約が成立し、支払い義務が生じる」と主張しています

NHKが主張する放送法の受信契約義務、テレビのような受信設備の設置者は無条件に受信契約の義務があるとする NHKの主張の合法性、及び、NHKの主張する放送法第64条1項の解釈の合憲性などについて、最高裁 大法廷が来年(2017年)中にも初判断を示すとみられています


一審 東京地裁、二審 東京高裁の判決では、男性が、2006年(平成18年)に自宅にテレビを設置、NHKが申込書を送ったが契約しなかったため、NHKが受信料を支払うよう求めて裁判を起こしたのに対し、「公共の福祉に適合する」として、裁判所が確定判決により受信契約の「承諾」を命じれば契約が成立するしました

その一方で、支払い義務は、「受信機の設置時期にさかのぼって生じる」として、男性に テレビを設置した 2006年以降の受信料として 21万円の支払いを命じ、双方が上告していました


NHKでは、2015年度の受信料支払率は 約 77% とする一方、2016年10月25日までに、全国で 221件の訴訟を起こしているとしています

NHKは、2009年から支払い請求に応じない事業所や世帯に民事裁判を起こしていますが、最高裁 大法廷はどの時点で契約が成立し、支払い義務が生じるかについても初めて判断を示す見通しです

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平成26(オ)1130 受信契約締結承諾等請求事件 平成29年12月6日 判決 全文
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関連記事を下記に紹介します



2017年12月14日

NHK受信料制度、「合憲」でも山積する課題 公共放送としてのあり方が問われている 東洋経済 12月14日 06:00


 受信料制度は合憲――。12月6日、NHK(日本放送協会)が受信料の支払いに応じない男性に対して起こした裁判で、最高裁判所大法廷はNHKの受信料を規定した放送法64条1項について、「憲法に違反するものではない」との判断を示した。
 放送法64条1項には、「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とある。被告の男性は、この条項が契約の自由や知る権利、財産権などを侵害していると主張した。だが最高裁はそれを退け、NHKに”お墨付き”を与えた格好だ。
 翌日、NHKの上田良一会長は定例会見で「引き続き、受信料制度の意義を視聴者に丁寧に説明し、公平負担の徹底に努めていく」と語った。
 NHKの主張を全面的に認めたわけではない
 多くのメディアが「受信料は合憲」という部分を強調して報道したため、NHKが勝訴したと感じた人も多いだろう。だが、実態は必ずしもそうではない。最高裁はNHKの主張を全面的に認めたわけではないのだ。本件で争われたほかの点を整理したい。
 まずは「受信契約がいつ成立するか」。NHKは被告の男性に契約を求める書面を送っており、「申し込み(契約を求める通知)が被告に到達した時点で契約が成立している」という驚くべき主張を展開していた。


2017年12月12日

【ZOOM】NHK受信料「合憲」 徴収の際に「錦の御旗」にならないか 20年前まで請求!? 産経新聞 12月12日 06:44


 NHKの受信料制度に対し、最高裁が合憲とする判断を示した。NHKは公共放送として“お墨付き”を得た形だが、今後、900万世帯と推計される未契約世帯にどのような態度で臨むのか。7日に開かれた上田良一会長の定例会見から、今後のNHKの方針と課題がみえてきた。
 未契約世帯の対応
 最高裁は、受信料制度を国民の知る権利を充足するために必要かつ合理的なものだとして、放送法を全面的に肯定。上田会長は今回の判決を「公共放送の意義を認めたもの」と評価し、「放送法を順守し、自主自律を貫いていく」と抱負を述べた。
 今後、NHKが受信契約締結を求めて裁判を起こせば、主張が認められる可能性が高い。NHKは約900万世帯の未契約世帯を相手に、大量の訴訟を起こしていくことになるのか。
 上田会長は会見で、受信料制度の維持には視聴者の信頼が不可欠であり、「訴訟だけをもって受信料をいただくことは考えていない」と強調してみせた。
 契約や徴収の現場では視聴者とのトラブルの報告もあるが、同席した砂押宏行営業局長は、「全訪問員に、判決を“錦の御旗”のように掲げて説明がおろそかにならないように、といった文書を(判決当日に)出した」と話し、未契約世帯に強圧的な態度に出ないよう注意を呼びかけたことを明らかにした。


2017年12月8日

NHK受信料最高裁判決 あるべき姿探る契機に 佐賀新聞 2017年12月8日 05:00


 NHKの受信料制度は契約の自由を保障した憲法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は「合憲」とする初の判断を示した。テレビがあるのに受信契約を拒む男性にNHKが支払いを求めて提訴。「受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばなければならない」と定める放送法の解釈が主な争点になった。
 契約の強制は契約の自由への重大な侵害と男性側は主張したが、最高裁は公共放送としてのNHKの役割を重視。その財政的基盤を広く負担してもらう仕組みについて「憲法が保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され、合理的なものと解される」と述べた。
 支払いを事実上の法的義務と位置付けて、NHKに“お墨付き”を与えた形だ。徴収業務や契約・支払いを求める裁判に及ぼす影響は大きい。ただインターネットの普及により若者のテレビ離れが進むなどメディアを取り巻く環境が激変する中、ネットのみの視聴者からも受信料を徴収しようという動きには厳しい視線が向けられている。
 民放からは「NHKの肥大化」を危ぶむ声も出ている。公共放送の役割を規定した放送法が施行されたのは1950年のことだ。最高裁判決を契機に時代の変化を踏まえ、受信料も含め公共放送のあるべき姿を探る議論を深める必要がある。
 NHKによると、2016年3月末の時点で受信契約の対象は全国で4621万世帯。このうち3709万世帯は契約を結んでおり、3612万世帯が受信料を支払っている。支払率は78・2%で、過去最高だった。16年度決算では事業収入7073億円のうち受信料収入は6769億円と95・7%を占めている。


2017年12月7日

NHK、最高裁判決を受信料徴収の「錦の御旗にしない」「公平負担の徹底に努めたい」 上田良一会長会見詳報 産経新聞 12月07日 19:49


 NHKの上田良一会長は7日、定例会見で、受信料制度を合憲とした最高裁大法廷判決について「公共放送の意義を認めたもので、受信料制度を視聴者に丁寧に説明し、公平負担の徹底に努めたい」と述べた。会見における判決に関する上田会長らの一問一答は次の通り。
 −−判決をどう受け止めたか
 「判決は民放との二元体制に言及したうえでNHKについて、放送法は、特定の個人、団体、または国家機関などから財政面での支配・影響が及ばぬよう、財源を受信料で賄うことにした、と述べている」
 「受信料制度という仕組みは、憲法の保証する表現の自由の下、国民の知る権利を満たすために採用された制度で、その目的にかなう合理的なものと解釈される、との考えを示した」
 「判決は、最高裁が公共放送の意義を認め、受信料制度が合憲である、という判断を示したもので、(NHKは)引き続き、受信料制度の意義を視聴者に丁寧に説明し、公平負担の徹底に努める。また公共放送の基本姿勢を堅持し、放送法を順守しながら、自主自立を貫いていく」
 −−改めて「公共放送」の意義をどう考えるか
 「公共放送の意義をどう考えるかについては、NHKは(1)正確で公平公正な情報を提供すること(2)安全で安心な暮らしに貢献すること(3)質の高い文化を創造すること−などの、公共的価値を実現することを追求してきた」


2017年12月7日

「TV20年前設置なら、さかのぼって受信料」 NHK 朝日新聞 12月07日 19:38


 NHKの受信料制度についての最高裁の合憲判決を受け、NHKの上田良一会長は7日の定例記者会見で、契約・徴収業務の変更はしない方針を示した。「従来のやり方を認めていただいたという理解だ。制度の意義を丁寧に説明して、公平負担の徹底に努めるのが大事なことだ」と述べた。
 6日の最高裁判決は事実上、受信料支払いを義務づける判断を示す一方、契約を拒む人については提訴して、承諾の意思表示を命じる判決を得るようNHKに求めた。上田会長は「公共放送としての役割を果たしているとの信頼がない限り、単に訴訟だけで受信料をちょうだいするとは考えていない」と訴訟の乱発を否定。「判決でも双方の意思表示の合致が必要とされている。これまでの通り、丁寧に説明する姿勢に変わりはない」と強調した。
 支払い義務が生じる期間について判決は、NHKが勝訴すれば、設置時にさかのぼって支払わなくてはならないとした。この点に関して、契約・徴収を管轄する砂押宏行営業局長が「例えば20年前から設置していますという申告があれば、公平負担の観点から払っていただくことになる」との原則を説明。一方で、「基本的にはお客様から設置の日を確認して契約を締結する」と話し、期間は視聴者の申告を基準にする考えを示した。
 また、同局長は契約・徴収業務を委託している業者や個人に対し、6日中に、「判決は出たが、丁寧な説明を必ずやる。錦の御旗のようにして説明がおろそかにならないよう文書を出した」と明かした。


2017年12月7日

<NHK会長>「公共放送の意義認められた」受信料合憲判決 毎日新聞 12月07日 19:22


 NHKの上田良一会長は7日の定例記者会見で、最高裁判決で受信料制度を合憲とする初判断が示されたことについて「最高裁が公共放送の意義を認めたもので、引き続き公平負担の徹底に努め、放送法を順守しながら自主自律を貫いていく」と述べた。
 今後の受信料徴収については「訴訟だけで(不払い世帯から)受信料をもらうことは考えていない。これまで通り、受信料制度の意義を視聴者に丁寧に説明する姿勢に変わりはない」と語った。判決当日の6日に、こうした方針を受信料徴収に当たる全訪問員に文書を出して徹底を図ったことも明らかにされた。


2017年12月7日

「見ていないのに支払うのはおかしい」困惑の声 読売新聞 12月07日 08:50


 NHKの受信料契約を巡る訴訟で、最高裁大法廷は6日、放送法が定めた受信料の支払い義務に初めてお墨付きを与えた。
 未契約者らから不満や戸惑いの声が相次ぐ一方、受信料を支払う契約者からは公平な負担の徹底を求める声が上がる。
 「残念」
 「憲法違反ではないという判決には、納得がいかない」。被告となった男性の代理人を務める弁護団は判決後、東京都千代田区で記者会見し、敗訴判決への無念さをにじませた。男性は今後、8年分の受信料約20万円を支払うことになる。高池勝彦弁護士は「残念だ」と悔しそうな表情を見せた。
 契約を拒む人に契約締結を強く迫る判断を示した最高裁判決に対し、未契約者の不満は根強い。
 「見ていないのに受信料を支払うのはおかしい」。東京都新宿区の男子大学生(21)はそう困惑する。


2017年12月7日

「NHK受信料って?」 支払率、全国一低い沖縄 50%満たない背景に米軍統治 沖縄タイムス 12月07日 07:15


 NHKの受信料を巡り、最高裁は6日、制度を合憲と判断した。沖縄県内は米軍統治下時代に民放がテレビ放送を先行。1967年まで受信料の概念がなかったためか、現在も受信料支払率は50%に届かず、全国一低い。今後、テレビを設置している未払い世帯に対しNHK側が「支払いは義務」として、督促を強める可能性がある。
 県内は、沖縄テレビが59年、琉球放送が60年に開局し、67年にNHKの前身・沖縄放送協会(OHK)が開局するまで、NHKのニュースなどは民放が伝えていた。 OHKの受信料支払いは琉球政府の放送法などで定められたが、それまで無料だったテレビ視聴が有料になるとあって、県民から猛反発が起きた。
 沖縄放送協会の社史には「本土は公共放送=受信料という永い支払い習慣があったが、県民の中に『放送はただ』という固定観念が定着していた」と記述している。
 NHK広報局によると、県内の受信料推計世帯支払率は2011年の41・4%から16年は48・8%と毎年改善しているが、全国で2番目に低い大阪府の63・5%とも大きく開いている。県内では未契約による提訴はこれまで世帯で7件、事業所で1件あった。
 NHKは今後も支払いを拒む未契約者には提訴も辞さない構え。最高裁は未払い者への受信料徴収の期間を「テレビ設置時点から」と判断したことから、今後、数十年分の支払いを求める可能性もある。


2017年12月7日

社説[NHK受信料「合憲」]知る権利の実現が責務 沖縄タイムス 12月07日 07:01


 NHKの受信料制度が「契約の自由」を保障する憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、合憲との初判断を示した。「放送内容が偏っている」などとしてNHKとの受信契約を拒否した男性の主張は退けられた。
 放送法64条1項は「受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばなければならない」と規定。その解釈が最大の争点だった。
 寺田裁判長は受信料制度について「NHKに国家機関などからの影響が及ばないようにし、広く公平に負担を求める仕組みだ」として同項は契約を強制する規定とし、「制度は国民の知る権利を充足するために採用され、表現の自由を確保するという放送法の目的を達成するために必要で合憲」と判断した。
 公共放送としてのNHKの役割を重視したものだ。国民の知る権利に応えているのかどうか、NHKの姿勢が問われているともいえる。
 これまでNHKではたびたび政治との距離を疑わせる報道姿勢が問題となってきた。人事や予算の承認権を国会に握られていることとも無関係ではないだろう。
 従軍慰安婦を巡る番組が放送前に政治的圧力で改変されたと指摘された問題や、安倍晋三首相に近いNHK前会長が領土問題で「政府が『右』と言うものを『左』と言うわけにはいかない」、特定秘密保護法には「(法案が)通ったので、もう言ってもしょうがないんじゃないか」などと発言したことは記憶に新しい。


2017年12月7日

<NHK受信料>徴収の「お墨付き」 同時に重い責任も 毎日新聞 2017年12月7日 06:09


 最高裁判決 「受信料義務」追い風
 NHKの受信料制度を合憲と判断した6日の最高裁大法廷判決は公共放送の意義を正面から認め、受信料の仕組みを「合理的」と判断した。NHKは徴収の「お墨付き」を得た形だが、同時に重い責任を負ったと言える。受信料の値下げを見送り、インターネットも活用した「公共メディア」の実現を目指す姿は、民放各局の目には「肥大化」と映る。ワンセグ機能付き携帯電話の取り扱いなど未消化の論点も残り、世界有数の巨大メディアを巡る議論は続く。【伊藤直孝、犬飼直幸】
 「表現の自由の下で国民の知る権利を充足させるために採用された仕組みで、憲法上許容される立法裁量の範囲内」。6日午後3時過ぎ、最高裁大法廷。退官を約1カ月後に控え、最後の判決言い渡しとなる寺田逸郎長官はほぼ満席の傍聴席に向かい、受信料制度の意義を述べた。
 判決は、放送法や受信料制度の成り立ちが表現の自由を掲げる憲法理念と合致すると指摘。放送法がNHKを「民主的・多元的な基盤に基づいて自律的に運営される事業体で、公共の福祉のための放送を行わせる」と位置づけていると解釈し、受信料制度は「公共的性格を財源面から特徴づける」とした。一方で、憲法が同様に保障する「契約の自由」を制限するか否かは明確には触れなかった。
 NHKは受信料の意義を「特定の利益や視聴率に左右されず、公平公正・不偏不党の役割を果たせる」と説明しており、これを最高裁も追認した形だ。だが、予算や人事で国会の制約を受けるNHKには「政治に弱腰だ」との疑問や批判がつきまとう。あるNHK幹部は自分の経験として「時の政権与党と、視聴者である市民の両方を見ながら危ういバランスを取ってきた」と振り返る。判決は「公共性」について詳しい定義をしておらず、NHKは予算基盤の保障と引き換えに重い宿題が課せられたと言える。


2017年12月7日

受信料制度合憲 NHKの在り方を考えたい 読売新聞 12月07日 06:03


 全国にあまねく良質の番組を提供する。公共放送の目的が果たされてこそ、受信料に対する国民の理解が得られる。
 最高裁大法廷が、NHKの受信料制度を「合憲」とする初めての判断を示した。
 判決は「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足すべく採用された」と、受信料制度の合理性を認めた。受信契約を義務付けた放送法の規定についても、「公平な受信料徴収のために必要だ」と結論付けた。
 国家や特定の個人、団体から財政面での支配や影響を受けないよう、事業運営の財源を受信料に求める。広く公平な負担によって支えられているNHKの特性と、公共放送としての存在意義を踏まえた判決だと言えよう。
 自宅にテレビがある男性が「視聴者の意思に委ねられる」と受信契約を拒否したため、NHKが受信契約を求めて提訴した。
 判決は「NHKがテレビ設置者の理解が得られるよう努め、これに応じて受信契約が結ばれることが望ましい」とも指摘した。
 これをNHKは重く受け止めるべきだ。災害情報など、公共の福祉に資する報道や番組をより充実させることが欠かせない。
 不偏不党で、公正な報道が求められるのは言うまでもない。報道番組での不適切な演出や、偏向した内容が目立つようでは、受信料制度の基盤が崩れる。


2017年12月6日

NHK受信料「合憲」=テレビ設置時から義務―「知る権利を充足」最高裁が初判断 時事通信 12月06日 23:55


 NHKの受信料制度をめぐり、テレビを持つ人に契約締結を義務付ける放送法の規定が憲法に反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、「国民の知る権利を充足する」として、規定を合憲とする初判断を示した。
 大法廷は「テレビ設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じる」とも判断した。判決は全国で900万世帯を超える未払いへの徴収を後押しする可能性があり、大きな影響を与えそうだ。
 放送法は、テレビなどの受信設備を置いた人は「NHKと受信契約をしなければならない」と規定している。この規定が憲法に違反しないかが最大の争点で、裁判で正面から合憲性が問われたのは、1950年のNHK設立以来初めてだった。
 大法廷は受信料制度について、「憲法の保障する国民の知る権利を実質的に充足する合理的な仕組み」と指摘。契約を強制する放送法の規定は「適正、公平な受信料徴収のために必要で憲法に違反しない」と判断した。裁判官15人中14人の多数意見。
 その上で、契約を拒んだ人に対し、NHKが承諾を求める裁判を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立すると判示。テレビの設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じるとの初判断も示した。木内道祥裁判官は「設置時からの支払い義務はあり得ない」とする反対意見を述べた。
 裁判になったのは、2006年に自宅にテレビを設置した東京都内の男性。契約申込書を送っても応じないとしてNHKが11年に提訴した。


2017年12月6日

【NHK受信料「合憲」】公共放送の使命忘れるな 産経新聞 12月06日 23:24


 NHKの受信料制度を「合憲」とした最高裁大法廷判決は、公共放送と民間放送が併存する「二元体制」は国民の「知る権利」を担保するための重要な仕組みと指摘。公共放送を担うNHKの財源として、テレビ設置者に公平に負担を求める制度には合理性があると結論づけた。
 受信料制度は、NHKを視聴しているかどうかにかかわらず、テレビ設置者すべてにNHKとの契約締結と受信料支払いを求めるものだ。民放が広告などに収益を頼るのに対して、NHKは受信料という安定した財源を約束されてきた。
 NHKには放送法で、日本全国で受信できる「豊かで良い番組」を放送する、といった義務も課されている。これまでに、受信料制度を是認する司法判断が続いてきたのは、地方向けの番組放送や災害報道、放送技術の研究など、NHKの公共的な役割に意義があると判断されてきたためだ。
 一方、放送法施行当時と比べ、民放の多様な番組やインターネットなど視聴者の選択肢は増え続けている。視聴者にはNHKを見ていないのに受信料を負担することへの不満もくすぶる。
 1審判決は「不偏不党の立場」や「視聴率にとらわれない多角的視点」を踏まえた放送が行われていないと視聴者が感じれば、「受信料制度を支える基盤の一つが失われることは明らか」とも警告している。
 NHKには、視聴者の声に真摯に耳を傾け、引き続き公共放送としての使命を全うすることが求められている。


2017年12月6日

【NHK受信料「合憲」】制度めぐる議論は途上 テレビ離れ…解決策見いだせず 産経新聞 12月06日 23:24


 NHKの受信料制度について最高裁大法廷は6日、憲法が保障する「表現の自由」や「知る権利」の実現に照らして、「合憲」とする初判断を示した。徴収に最高裁が「お墨付き」を与えた形だが、契約成立時期についてはNHKの主張を退け、安易な徴収に歯止めをかけた。インターネットの普及によるテレビ離れも続いており、制度をめぐる議論は途上だ。
 「知る権利を充足」
 受信料制度を定めた放送法は昭和25年に施行され、その後、民間事業者による放送が始まった。最高裁がまず着目したのは、この「二元体制」だ。
 最高裁は「公共放送と民間放送がそれぞれ長所を発揮する」という二元体制の趣旨を踏まえた上で、公共放送の財源を受信料でまかなうのは「NHKに国家機関や団体からの財政面での支配や影響が及ばないようにする」ための仕組みだと指摘。放送法の規定はテレビ設置者に契約締結を強制するものだが、国民の知る権利を充足するという目的を実現するために、必要かつ合理的なものだとした。
 NHKは訴訟で、公共放送の意義についても強調。弁論で、身元不明や親族が引き取りを拒否する遺体が年々増加していることなどを取り上げた「NHKスペシャル」を挙げ、長期的な取材で社会的議論を呼ぶことで、「視聴した人はもちろん、視聴しなかった人も恩恵を享受している」と訴えていた。
 判決は公共放送の具体的なあり方には踏み込まなかったが、放送法を全面的に肯定する結論となった。


2017年12月6日

【NHK受信料「合憲」】男性側「納得いかぬ判決」 NHK「公平負担を徹底」 産経新聞 12月06日 23:14


 NHKの受信料制度を「合憲」と判断した上告審判決後、男性側の代理人らは東京都千代田区で会見を開いた。高池勝彦弁護士は「納得いかない判決。放送法の見直し議論に何の寄与もせず、今まで通りの惰性が続くことになる」と批判。林いづみ弁護士は「今回はテレビについての判決だが、今後インターネット端末にもこの理論が適用されれば重大な問題。時代に合う徴収のあり方は、国民が声を上げていくべきだ」と語った。
 一方、NHKの職員からは安堵の声も聞かれた。制作部門の40代の職員は「正直ほっとした。今後は視聴者に納得してもらうためにも粛々といいものを作っていくほかない」と話した。


2017年12月6日

【NHK受信料「合憲」】放送法制定から60年 ネット戦略模索するNHK 産経新聞 12月06日 22:59


 NHKの受信料制度は最高裁から「合憲」と判断されたが、インターネット時代を迎え岐路に立たされている。受信料徴収の根拠となる放送法の制定は60年以上前で、多様化した現代のメディア状況に対応できておらず、公共放送に対する国民の認識も大きく変化した。NHKは視聴者の十分な理解を得られないまま、将来的な財源確保を狙いネット戦略を模索している。
 放送法の制定は昭和25年。今回の訴訟でNHKは、全国的な放送網や災害報道の維持などに「受信料制度が不可欠」と主張したが、NHKがテレビ放送を開始した28年に1社だった民放のテレビ局は、現在130社以上となり多彩な番組を提供している。ネットメディアの普及も相まって公共放送の存在感は薄れつつあるのが実情だ。
 受信料は放送の対価ではなく、公共放送を維持するための「特殊な負担金」と位置付けられる。だが、平成27年のNHK調査では、20代の16%、30代の13%がテレビを「ほとんど、まったく見ない」と回答するなど若者のテレビ離れは顕著だ。立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「NHKの必要性を感じない人が増えるほど、受信料を支払う意義はますます形骸化していく」と指摘する。
 さらに長期的な視野に立てば、人口の減少も作用し、NHK財政にとって「大きな懸念材料」(NHK関係者)となっている。
 NHKもネット戦略の強化にかじを切っている。その柱となるのが、ネットでテレビと同じ番組を流す「常時同時配信」で、放送法を改正し31年度から始める考えだ。NHKは「応分の負担を求める」(上田良一会長)として、同時配信に伴いテレビを持たずネットのみで視聴する世帯向けに受信料を新設し、将来の新たな財源確保に道筋をつけたい狙いがある。


2017年12月6日

<NHK受信料合憲>判決を国民議論の出発点に 毎日新聞 12月06日 21:50


 NHKの受信料制度を合憲とする最高裁判決が示されたが、国民が広く公平にNHKを支えるという放送法の趣旨を考えれば、本来は先に国民の間で公共放送に関する議論を深める必要があった。判決はこうした議論の出発点と考えるべきだ。
 受信料の支払率はNHKが法的手段に乗り出してから回復傾向にあるが、同時に受信契約の消費者相談もここ10年間で4倍に急増した。消費者問題に詳しい弁護士などからは「NHKは焼け太りだ」と反発の声も上がっており、仮に判決を「錦の御旗(みはた)」に強硬な徴収を続けるようであれば、国民の信頼を失いかねない。
 判決も「NHKがテレビ設置者の理解が得られるように努め、これに応じて契約が結ばれることが望ましい」とクギを刺した。谷江陽介・立命館大准教授(民法)は「受信料制度の出発点は国の関与を極力排し、国民の納得を得て自発的に負担してもらうこと。今後も国民の理解を得ることを原則に契約に臨むべきだ」と話す。
 テレビを取り巻く状況が激変する中、受信料の在り方を見直すべきだという声も根強い。諸外国の公共放送を支えるさまざまな負担方式の利点と欠点を参考にしつつ、NHKの将来像も含めた幅広い議論が望まれる。


2017年12月6日

<NHK受信料合憲>さらに期待の「健全な報道を」 毎日新聞 12月06日 21:20


 NHKの受信料制度は合憲−−。最高裁が初判断を示した6日、元NHK職員らからは「公共放送として、市民の期待に応えるNHKになってほしい」「司法のお墨付きを得ても、消費者の経済状況を無視した無理な徴収はやめて」と願う声が上がった。一方、契約締結と受信料の支払いを拒んできた被告男性側の弁護団は「通り一遍で予定調和の判決」「旧態依然の受信料方式を許し、大変残念」と批判した。
 「判決は、NHKに課された責任の重さを突きつけている。それにNHKが応えられているのか」。この日の判決を受け、NHKで約30年間にわたり番組制作に携わった元プロデューサーの永田浩三さん(63)は語った。
 従軍慰安婦を巡るドキュメンタリー番組「問われる戦時性暴力」(2001年放送)で編集長を務め、放送後に市民団体がNHKを訴えた訴訟で、局の幹部が現場に介入した実態を細かく証言した。
 組織に反旗を翻す形になり、09年に早期退職したが「NHKの仕事はすごく面白かった」と振り返る。ドキュメンタリー制作の現場では、先輩から放送法の精神を説かれた。阪神大震災やオウム真理教事件では、NHK記者たちの取材の緻密さに驚いた。
 それだけに、古巣の今に歯がゆさを感じる。6月には加計学園問題で前川喜平・前文部科学事務次官が「最初にインタビューされたのはNHKだが、放送されない」と明かし、政権への配慮があったのではないかと指摘された。永田さんは「今回の判決で、NHKの報道に疑問を持つ人の声まで消えるわけではない。公共放送として、健全な報道を求める世の人に向けて仕事をしてほしい」と後輩に望む。


2017年12月6日

NHK受信料判決、弁護士出身の裁判官1人が反対意見 弁護士ドットコム 12月06日 21:06


 NHKの受信料制度を合憲などとした12月6日の最高裁大法廷判決では、15人いる裁判官のうち、弁護士出身の木内道祥裁判官が、1人反対意見をつけた。受信料制度を違憲としているわけではなく、判決とは別の理由で受信料を支払わせるかを判断するのが適切としている。
 木内裁判官は、放送法64条1項やNHKの放送受信規約を分析し、裁判所の判決によって、消費者側に受信契約を結ぶよう強制することはできないと指摘。また、判決確定後から進行するとされた「消滅時効」などについても、ほかの時効と比較した上で、「およそ…消滅することのない債務を負担するべき理由はない」と述べている。
 木内裁判官は、NHKと契約することなく、放送を受信できる状態になっていることで、不当利得返還義務や損害賠償義務が生じるとしている。
 このほか、鬼丸かおる裁判官は判決には賛成しつつも、受信契約の内容はNHKの規約ではなく、「本来は、受信契約の内容を含めて法定されるのが望ましい」との補足意見をつけた。
最高裁判決は、以下のリンクから。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/281/087281_hanrei.pdf


2017年12月6日

<NHK受信料>「契約を結び受信料支払いは法的な義務」 毎日新聞 2017年12月6日 20:59


 最高裁大法廷が初判断
 NHK受信料制度の憲法適合性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長=寺田逸郎長官)は6日、制度を「合憲」とし、契約後はテレビを設置した月までさかのぼって支払い義務が生じるとの初判断を示した。大法廷はNHKの公共的役割を認め、国民が受信契約を結んで受信料を支払うことは法的な義務だとした。契約を求められた世帯は事実上、拒否できなくなったといえ、未契約の約900万世帯に影響を与えるのは確実だ。
 大法廷は制度を「知る権利の充足と健全な民主主義発達への寄与を究極的な目的とし、特定の個人・団体や国家機関から財政面で影響が及ぶことがないよう、受信設備(テレビ)設置者に公平負担を求めたもの」と位置づけ、受信契約を定めた放送法64条は強制的な義務を課した規定とした。
 その上で「放送を巡る環境が変化しても制度の合理性が失われたとは言えず、憲法上許される範囲内」とし、64条は合憲と認めた。裁判官15人中14人の多数意見。木内道祥(みちよし)裁判官の反対意見は契約成立に関するもので、制度を違憲とした裁判官はいなかった。
 一方で、NHKと契約拒否者の契約は「双方の意思の合致が必要」とし、契約の成立時期を「契約申込書が設置者に届いた時点」としたNHKの主張を否定。また、受信料の支払い義務が生じる時期は「テレビ設置時点」、NHK側が受信料を徴収できなくなる消滅時効(5年)の起算点は「契約時点」との見解も示した。これにより、契約拒否者が訴えられた場合は原則として敗訴し、テレビ設置月から受信料を支払わなければならなくなる。


2017年12月6日

NHKの受信契約義務は「合憲」…最高裁 読売新聞 2017年12月6日 20:07


 NHKが受信契約の締結を拒んだ人に、受信料の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、テレビを持つ人にNHKとの受信契約を強制した放送法64条1項を「合憲」とする判決を言い渡した。
 また、NHKが契約を拒む人を相手取って裁判を起こし、勝訴が確定すれば、テレビ設置時まで遡って受信料の支払い義務が生じるとの初判断も示した。
 判決は、全国で約900万世帯(今年3月末現在)あるとされる未契約者からの受信料徴収に、大きな影響を与える可能性がある。
 15人の裁判官のうち、14人の多数意見。木内道祥裁判官は「受信契約の締結は判決で命じられる性質のものではない」とする反対意見を述べた。
 大法廷はまず、NHKの受信料制度の意義について、「特定の個人や団体、国家機関から財政面での支配や影響が及ばないよう、NHK放送を見られる環境にある人に広く公平に負担を求めたもの」と指摘。同法64条1項については「テレビを持つ人に受信契約の締結を強制したもの」とした上で、「受信料制度は憲法が保障する『表現の自由』の下で、国民の知る権利を満たすために合理的だ」と述べ、「合憲」と判断した。
 その上で、NHKが未契約者を相手取って裁判を起こし、勝訴判決が確定した時点で受信契約が成立すると判断。未契約者がその後支払うべき受信料については「すぐに契約を締結した人との間で支払うべき受信料に差が生じるのは公平ではない」として、テレビ設置時からの支払いを求めた。


2017年12月6日

「理不尽な判決」=受信料徴収強化を懸念―男性側弁護団 時事通信 2017年12月6日 19:23


 受信料制度を合憲とした最高裁判決を受け、NHKに訴えられた男性の弁護団が6日、東京都内で記者会見し、「理不尽な判決だ」と受信料徴収が強化する事態への懸念を示した。
 弁護団代表の高池勝彦弁護士は「われわれの全面敗訴だ。受信料制度の改革には寄与しない」と悔しさをにじませた。
 最高裁は、受信契約の承諾を命じる判決が確定するまで、未払い分の「時効」はスタートしないと判断した。尾崎幸広弁護士は「テレビを設置した50年前までさかのぼって受信料の支払い義務があることを是認する内容だ」と批判した。
 テレビを多数設置するホテルなどは負担が大きくなる可能性があると指摘し、「つぶれる所も出てくるかもしれない。非常に理不尽だ」と憤った。
 弁護団によると、NHK内の審議会では、インターネットによる番組放送についても、スマートフォンなどを所有した時点からの支払いを求めることが議論されているという。弁護団は「看過できない。旧態依然とした制度でいいのか。ネット時代にふさわしい立法を国民が求めていくべきだ」と訴えた。


2017年12月6日

NHK受信料合憲、男性側「大山鳴動して鼠一匹」「ネット同時配信で制度見直しを」 弁護士ドットコム 12月06日 18:42


 受信料制度は「憲法に違反しない」などとする、12月6日の最高裁大法廷判決を受けて、違憲を主張していた弁護団は、「大山鳴動して鼠一匹」「納得いかない」と不満をあらわにした。
 この裁判は、NHKが受信料の支払いを拒む都内の男性に対して起こしたもの。最高裁は、NHKと男性、双方の上告を棄却。
 消費者が、NHKからの契約の申し込みを承諾しないときは、判決の確定をもって契約締結となり、(1)テレビなどの設置時期にさかのぼって支払い義務が生じる、(2)消滅時効は、判決確定時から進行するーーとした2審東京高裁判決を支持した。
 受信料の違憲性を問う主張「一切許さない」という最高裁の意思表示
判決を受けて、男性側代理人の尾崎幸廣弁護士は、理論上は50年分の受信料請求も可能になるとして、「NHKは、おそらく訴訟を起こさないだろうから、これで良いという判断なんだろう。非常に卑怯な判決だ」と述べた。
 この裁判では、10月25日に、最高裁で弁論が開かれている。弁論は判決が変わる際に必ず開かれるが、今回は事実上の「現状肯定」となった。
 尾崎弁護士は、「死刑については、口頭弁論が開かれる。我々は死刑囚扱いされた。最後に言い分だけは言わせてやろうという裁判だった」。高池勝彦弁護士は、「(受信料の違憲性を問う主張は今後)一切許さないという、最高裁の意思表示だろう」と振り返った。


2017年12月6日

「主張認められた」とNHK 受信料制度の合憲判断で 産経新聞 2017年12月6日 18:24


 最高裁が示した判断を受けNHKは6日、次のようなコメントを発表した。
 「判決は公共放送の意義を認め、受信契約の締結を義務づける受信料制度が合憲であるとの判断を最高裁が示したもので、NHKの主張が認められたと受け止めています。引き続き、受信料制度の意義を丁寧に説明し、公平負担の徹底に努めていきます」


2017年12月6日

NHK受信料「合憲」=「知る権利を充足」―テレビ設置時から義務―最高裁が初判断 時事通信 2017年12月6日 18:13


 NHKの受信料制度をめぐり、テレビを持つ人に契約締結を義務付ける放送法の規定が憲法に反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、「国民の知る権利を充足する」として、規定を合憲とする初判断を示した。
 大法廷は「テレビ設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じる」とも判断した。判決は全国で900万世帯を超える未払いへの徴収を後押しする可能性があり、大きな影響を与えそうだ。
 放送法は、テレビなどの受信設備を置いた人は「NHKと受信契約をしなければならない」と規定している。この規定が憲法に違反しないかが最大の争点で、裁判で正面から合憲性が問われたのは、1950年のNHK設立以来初めてだった。
 大法廷は受信料制度について、「憲法の保障する国民の知る権利を実質的に充足する合理的な仕組み」と指摘。契約を強制する放送法の規定は「適正、公平な受信料徴収のために必要で憲法に違反しない」と判断した。裁判官15人中14人の多数意見。
 その上で、契約を拒んだ人に対し、NHKが承諾を求める裁判を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立すると判示。テレビの設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じるとの初判断も示した。木内道祥裁判官は「設置時からの支払い義務はあり得ない」とする反対意見を述べた。


2017年12月6日

NHK受信料制度「合憲」 最高裁が初判断 携帯視聴では論点残る 産経新聞 2017年12月6日 15:24


 テレビがあるのに受信契約を拒んだ男性に、NHKが受信料を請求できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、受信料制度は「表現の自由を実現するという放送法の趣旨にかなうもので、合憲」との初判断を示した。「契約の自由」などを保障した憲法に違反するとした男性側の主張を退け、双方の上告を棄却。男性にテレビ設置以降の受信料支払いを命じた2審東京高裁判決が確定した。
 15人の裁判官のうち14人の結論。契約の成立時期は、NHKが未契約者を相手に裁判を起こし、勝訴が確定した時点とした。木内道祥裁判官は「放送法が定める契約義務は判決では強制できない」との反対意見を述べた。
 「受信設備を設置した者は、NHKと受信についての契約をしなければならない」とした放送法の規定の合憲性が最大の争点。900万件以上とされる未契約世帯への徴収業務に大きな影響を与えそうだ。
 一方、携帯電話のワンセグ機能をめぐっては司法判断が分かれており、受信料についての論点は今後も残されている。
 大法廷は「放送は、憲法が保障する表現の自由の下で、国民の知る権利を充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、広く普及されるべきものだ」と指摘。これを実現するために公共放送と民間放送の「二元体制」がとられており、公共放送の財源について公平に負担を求める仕組みは合理的で憲法に違反しないとした。


2017年12月6日

NHK受信料制度「合憲」 最高裁が初判断 テレビ設置以降の受信料支払い命じる 産経新聞 2017年12月6日 15:24


 テレビがあるのに受信契約を拒んだ男性に、NHKが受信料を請求できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、「放送法はNHKとの契約を強制する規定」とし、「受信料制度は合憲」との初判断を示した。大法廷は男性側の上告を棄却。男性にテレビ設置以降の全期間の受信料支払いを命じた1、2審判決が確定した。
 放送法64条1項は「受信設備を設置した者は、NHKと受信についての契約をしなければならない」と規定している。男性は平成18年3月にテレビを設置。NHKが23年9月に申込書を送ったが契約を結ばなかったため、NHKが契約締結や受信料の支払いを求める訴えを起こしていた。
 放送法の規定の合憲性が最大の争点で、男性側は放送法の規定は「契約締結への努力義務を定めたにすぎない」とし、契約義務を規定しているとすれば「契約の自由」を保障する憲法に違反すると主張していた。
 NHK側は、不偏不党の立場から多角的視点で放送を行う公共放送としての役割などを踏まえれば「受信料制度が憲法に違反しないことは明らか」と反論。法相からも「合憲」との意見書が提出されていた。
 (1)契約を拒む人との受信契約はどの時点で成立するか(2)受信料をいつまで遡って支払う義務があるか−も争点となっていた。1、2審は、NHKが申込書を送っただけでは契約は成立しないが、NHKが未契約者を相手に訴訟を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立すると判断。男性に、テレビ設置時まで遡って受信料を支払うよう命じた。


2017年12月6日

NHK受信料「合憲」=最高裁が初判断 時事通信 2017年12月6日 15:20


 NHK受信料をめぐり、テレビを持つ人に契約締結を義務付けた放送法の規定が憲法に反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、規定を合憲とする初判断を示した。
 大法廷は「テレビ設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じる」とも判断した。判決は全国で900万世帯を超える未払いへの徴収を後押しする可能性があり、大きな影響を与えそうだ。
 訴えられたのは、2006年に自宅にテレビを設置した東京都内の男性。契約申込書を送っても応じないとして、NHKが提訴した。
 放送法は、テレビなどの受信設備を置いた人は「NHKと受信契約をしなければならない」と規定している。この規定が憲法に違反しないかが最大の争点で、裁判で正面から合憲性が問われたのは、1950年のNHK設立以降初めてだった。
 男性側は、契約は視聴者の意思で結ぶべきで、規定は憲法が保障する「契約の自由」に反すると主張。NHK側は受信料制度には十分な必要性と合理性があるとして合憲だと反論した。
 一、二審は、放送法の規定は「公共の福祉に適合している」として合憲と判断。男性に約20万円の支払いを命じた。


2017年12月6日

NHK受信契約、テレビあれば「義務」 最高裁が初判断 朝日新聞 2017年12月6日 15:18


 NHKが受信契約を結ばない男性に支払いを求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、テレビがあればNHKと契約を結び受信料を支払う義務がある、とする初めての判断を示した。男性は受信契約を定めた放送法の規定は「契約の自由」を保障する憲法に違反すると主張したが、最高裁は規定は「合憲」と述べ、男性の上告を退けた。
 争われたのは、2006年3月、自宅にテレビを設置した男性のケース。NHKは11年9月、受信契約を申し込んだが「放送が偏っている」などの理由で拒まれ、同年11月に提訴した。
 1950年制定の放送法の規定は「受信設備を設置したらNHKと契約しなければならない」と定める。この解釈について、男性側は「強制力のない努力規定。受信契約が強制されるなら契約の自由に対する重大な侵害だ」として違憲だと主張。NHKは「義務規定。公共放送の意義を踏まえれば必要性や合理性がある」として合憲と訴えた。
 また、受信契約の成立時期について、NHKは、契約を申し込んだ時点で自動的に成立するとし、テレビ設置時にさかのぼって受信料を支払うべきだと主張。一方、男性側は、NHKが未契約者に対して裁判を起こし、契約の受け入れを命じる判決が確定した時点で契約が成立し、それ以降の支払い義務しかないと反論していた。
 一、二審判決は、放送法の規定は合憲で、契約義務を課していると判断。契約の受け入れを命じる判決が確定した時点で契約が成立し、テレビ設置時にさかのぼって受信料を支払う必要があると結論づけた。この裁判では、国民生活に与える影響が大きいとして、金田勝年法相(当時)も4月、規定は合憲とする意見書を最高裁に提出していた。


2017年12月6日

NHK受信料「合憲」と最高裁 共同通信 2017年12月6日 15:11


 NHKの受信料制度が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は合憲と初判断。


2017年12月6日

<NHK受信料>制度は「合憲」 最高裁が初判断 毎日新聞 2017年12月6日 15:10


 NHKの受信料制度が憲法が保障する「契約の自由」に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、制度を「合憲」とする初判断を示した。国民が公平に財源を負担してNHKを支える制度の合理性を司法が認めた形となる。今後の公共放送のあり方を巡る議論や、約900万世帯に上る未契約者からの受信料徴収にも影響を与えそうだ。
 今回の裁判は2006年にテレビを設置した後、「偏った放送内容に不満がある」と受信契約を拒んでいた東京都内の60代男性を相手取り、NHKが契約締結や未払い分の支払いを求めて11年に提訴。NHKはこれまで未契約者に対する同種訴訟を約300件起こしているが、最高裁が判決を出すのは今回が初めて。
 放送法64条は、テレビなどの放送受信設備を設置した世帯や事業所は「NHKと受信契約をしなければいけない」と規定する。この規定を巡り、男性側は「罰則はなく、努力義務に過ぎない。契約を強制する規定だとすれば憲法に違反する」と主張。NHK側は「放送法が定める『豊かで良い放送』をするために受信料制度は不可欠で、合理性や必要性がある」などと反論していた。
 1、2審は、契約は義務と認めた上で受信料制度は「公共の福祉に適合し必要性が認められる」と合憲判断。男性に未払い分約20万円の支払いを命じた。双方の上告を受け、最高裁は昨年11月、15人の裁判官全員で憲法判断や重要な争点の判断を行う大法廷に審理を回付していた。


2017年12月4日

<NHK受信料>合憲か 契約成立時期など判断へ 6日判決 毎日新聞 12月04日 21:36


 NHK受信料制度の合憲性が争われた訴訟の上告審判決が6日、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で言い渡される。憲法判断とともに、受信契約の成立時期や支払い義務の発生時期など、支払いに影響する複数の争点についても統一的な司法判断が示される見通しだ。
 ◇徴収現場に大きく影響
 放送法64条は「受信設備の設置者はNHKと受信契約をしなければならない」と規定する。裁判は、NHKが、契約を拒否する東京都内の男性を相手取って受信料支払いを求めて提訴した。放送法の規定が、憲法が保障する「契約の自由」の制限に当たるかが主な争点だ。
 一方、契約の実務についても複数の争点がある。契約を拒否する人に対していつ受信契約が成立するかについて、1、2審は「テレビ設置者に契約承諾を命じる判決が確定した時」とし、「契約申込書が設置者宅に届いた時点で成立する」というNHKの主張を退けた。ただし、NHKの主張を認めた別の判決もあり、裁判所によって判断が割れている。
 仮に申込書が届いた時点で契約の「自動成立」が認められた場合、NHKは、これまで契約済みの滞納者に限って実施していた支払い督促などの簡易な法的手続きを契約拒否者にも取れるようになり、900万超といわれる未契約世帯から受信料の回収が進む可能性がある。
 また、受信料の支払い義務がいつから発生するかや、設置者側が主張した場合に受信料の支払い義務がなくなる「消滅時効」(5年)が、どの時点から計算されるかも争点だ。


2017年12月4日

<NHK受信料>相談、10年で4倍 滞納5年超分も集金 毎日新聞 2017年12月4日 08:30


 NHKの受信契約などを巡り、全国の消費生活センターに寄せられた相談件数が2016年度に8472件となり、過去10年間で4倍に急増した。集金業務の強化と関連があるとみられ、消費者問題に詳しい弁護士は「NHKは適切な集金に努めるべきだ」と指摘する。最高裁は6日、受信料制度の憲法適合性について初判断を示す。
 相談件数は、集金トラブルを巡る訴訟でNHKを訴えた原告側の弁護士が国民生活センターに照会し、今年4月に回答を得た。
 毎日新聞が裁判記録に添付されたセンターの回答書を閲覧したところ、07年度の相談件数は1926件だったが、右肩上がりが続き、15年度に8000件を超えた。07〜16年度の10年間の合計は約5万5000件で、年代別では20代が7074件と最も多く、60代7032件▽70代6520件▽30代6446件−−と続いた。
 相談には、1人暮らしの息子が午後8時ごろに集金担当者の訪問を受け、契約の自覚なく名前を書かされた▽テレビはないが、賃貸住宅でアンテナがあるため担当者に迫られ契約してしまった−−などの事例があった。
 受信料の不払いはNHKで不祥事が相次いだ04年ごろから急増。支払率は06年度に68%まで落ち込んだ。NHKは同年から支払い督促など集金の強化に乗り出し、昨年度は79%まで上昇した。相談の増加はこの動きと関連しているとみられる。
 一方、受信料は滞納者が時効を主張した場合、過去5年分までしか徴収できないことが14年の最高裁判決で確定している。一定期間行使されない権利を消滅させる「消滅時効」と呼ばれる制度で、NHK側に通知義務はない。ただし、トラブルも報告されている。


2017年12月4日

NHK受信料訴訟 受信料制度の趣旨、丁寧な説明を期待 鈴木秀美・慶応大教授(メディア法) 産経新聞 12月04日 05:04


 放送法が定めているのはNHKとの「契約締結義務」で、「受信料支払い義務」ではない。支払っていない人への罰則もなく、NHKが裁判をしない限り、強制的に受信料を取る仕組みになっていないのが、日本の受信料制度の特徴だ。
 受信料を強制的に取り立てると税金の性質に近くなるため、財源を糸口にして時の政権や与党が放送内容に干渉してくる可能性もある。制度設計の際に、国家の関与をできる限り排除するため、受信料を強制的に徴収することは適当ではないと考えたのだろう。
 日本は戦後、公共放送と民間放送が併存する「二元体制」をとってきた。NHKは受信料という財源を持つ一方、放送法で「豊かで良い放送」をあまねく行う義務が課されている。最高裁が判決の中で、公共放送の存在意義や受信料制度の趣旨を丁寧に説明することを期待している。


2017年12月4日

NHK受信料訴訟、6日に「合憲性」初判断へ 公共放送の意義言及に注目 最高裁 産経新聞 2017年12月4日 05:04


 テレビがあるのに受信契約を拒んだ男性に、NHKが受信料を請求できるかが争われた訴訟の上告審判決が6日、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で言い渡される。男性側は、契約を強制するのは「契約の自由」を保障する憲法に違反すると主張。最高裁は、受信料制度の合憲性や、どの時点から受信料を支払わねばならないかについて、初判断を示す見通しだ。NHKの公共放送としての意義について言及するかも注目される。
 放送法64条1項は「受信設備を設置した者は、NHKと受信についての契約をしなければならない」と規定している。男性は平成18年3月にテレビを設置。NHKが23年9月に申込書を送ったが契約を結ばなかったため、NHKが契約締結や受信料の支払いを求める訴えを起こしていた。
 最大の争点は、放送法の規定が合憲かどうかだ。
 男性側は、放送法の規定は「契約締結への努力義務を定めたにすぎない」とし、契約義務を規定しているとすれば憲法に違反するとしている。
 これに対してNHK側は、不偏不党の立場から多角的視点で放送を行う公共放送としての役割などを踏まえれば「受信料制度が憲法に違反しないことは明らか」と主張。上告審では法相からも、「合憲」との意見書が出されている。
 最高裁が受信料制度を「合憲」とした場合、(1)契約を拒む人との受信契約はどの時点で成立するか(2)受信料をいつまで遡(さかのぼ)って支払う義務があるか−についても判断を示すことになる。


2017年12月3日

NHK受信料、憲法判断へ=放送法で「契約義務」―6日大法廷判決・最高裁 時事通信 2017年12月3日 14:36


 テレビがあるのに受信契約に応じない男性に対し、NHKが契約締結と受信料の支払いを求めた訴訟の上告審判決が6日、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で言い渡される。大法廷は放送法が定める受信契約の義務について初の憲法判断を示す見通しで、公共放送の根幹を支える受信料制度について、裁判官がどのような意見を述べるかも注目される。
 NHKでは2004年以降、職員による番組制作費詐取など不祥事が相次いで発覚し、受信料の不払いが急増。このため「公平負担の徹底」を掲げ、滞納者らに対する法的措置に踏み切った。
 今回訴えられた東京都内の男性は、06年に自宅にテレビを設置したが契約に応じなかったため、NHKが提訴した。
 最大の争点は、テレビなどの受信設備を置いた人は「NHKと受信契約をしなければならない」とする放送法の規定が、憲法に違反しないかだ。
 男性側は弁論で、契約締結は視聴者の意思によるべきで、放送法の規定は「契約の自由」に違反すると主張。NHK側は受信料制度には必要性と合理性があるとして、「憲法に違反しないことは明らかだ」と反論した。
 このほか、契約がいつ成立するかや、支払い義務が生じる時期も争点となっている。昨年度末で900万件を超える未契約世帯への対応にも影響が出そうだ。


2017年12月3日

NHK受信料は義務か 最高裁判決、「いつ起点」も焦点 朝日新聞 2017年12月3日 07:45


 家にテレビがあったらNHKの受信料を支払わなければならないか。NHKと契約を結ばず受信料を支払わない男性に、NHKが支払いを求めた訴訟で、最高裁大法廷が6日、判決を出す。男性は憲法が保障する「契約の自由」を理由に支払いを拒んでおり、受信料の支払いをめぐって憲法判断が示されるのは初めて。
 最高裁が判決を出すのは、2006年3月に自宅にテレビを設置し、11年9月にNHKから契約を申し込まれた後も受信契約を結ばず、受信料を支払っていない男性のケース。男性は同年11月にNHKに提訴された。
 放送法は「受信設備を設置したらNHKと契約しなければならない」と定めているが、受信料の支払い義務は明文化されていない。受信料は総務省の認可を得た規約で定められている。
 NHKは不祥事などで受信料の支払率が下落したことを受け、06年から支払いの督促などの法的手段を取り始めた。支払率は上昇したが、契約しながら未払いの世帯は16年度も2割を超える。ワンセグ放送なども含めると未契約の世帯や事業所は全国で約1千万に上るという。過去に受信料を巡って裁判になったケースは4千件以上ある。
 判決は15人の裁判官全員が参加する大法廷で審理されている。金田勝年法相(当時)は今年4月、放送法の規定は合憲とする意見書を最高裁に出した。判決が社会に大きな影響を与えると判断した場合にとれる措置で、戦後2例目だった。


2016年11月2日

NHKの受信契約義務、最高裁大法廷が初判断へ テレビがあるのに契約せず…受信料は徴収できるのか 産経新聞 2016年11月2日 21:49


 テレビがあるのに受信契約の締結を拒んだ男性に、NHKが受信料を請求できるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は2日、審理を大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付した。大法廷へは、憲法判断や判例変更を行う場合のほか、重要な論点が含まれる場合にも回付される。放送法が定めるNHKの受信契約義務について、最高裁が来年中にも初判断を示すとみられる。
 NHKは未契約者に受信料支払いを求める訴訟を各地で起こしており、最高裁の判断によっては徴収の方法などに影響を与えそうだ。
 放送法64条1項は「受信機を設置した者は、NHKと受信についての契約をしなければならない」と規定。(1)契約がどの時点で成立するか(2)放送法は合憲か−などが争点となった。
 男性側は「放送法は訓示規定なので違反しても支払い義務はなく、契約締結を強制する放送法は違憲」と主張。NHK側は「受信機を設置した人は契約締結義務があり、NHKが契約締結申込書を送った時点で契約が成立する」とし、自由に解約できることから「放送法は合憲」としていた。
 1、2審判決によると、男性は平成18年に自宅にテレビを設置。NHKが申込書を送ったが契約しなかったため、受信料を支払うよう求めていた。
 1審東京地裁は、申込書を送っただけでは契約は成立しないとしたが、放送法に基づいて男性にNHKと契約を結んだ上で受信料約20万円を支払うよう命じ、2審東京高裁も支持した。


2016年11月2日

<NHK受信料>支払い義務あるか 最高裁が大法廷に回付 毎日新聞 2016年11月2日 21:22


 ◇放送法の合憲性など、初判断へ
 NHKとの受信契約を拒否した人に受信料の支払い義務があるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は2日、審理を大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付した。テレビのような受信設備の設置者に受信契約を義務付けた放送法の合憲性などについて、大法廷が初判断を示すとみられる。
 大法廷は法令が憲法に適合しているか初めて判断する場合や、重要な争点があるケースで開かれ、最高裁の全裁判官15人で審理される。NHKは2009年から度重なる支払い請求に応じない事業所や世帯に民事裁判を起こしているが、地裁や高裁では合憲判断が定着している。大法廷はどの時点で契約が成立し、支払い義務が生じるかについても初めて判断を示す見通し。
 大法廷に回付されたのは、NHKが東京都の男性に受信料支払いを求めた訴訟。NHK側は「放送法に基づきNHKからの申し込みが届いた時点で自動的に契約が成立し、支払い義務が生じる」と主張し、男性側は「放送法は契約の自由を保障した憲法に反する」などと反論している。
 1、2審は「公共の福祉に適合する」として放送法の規定を合憲と判断。判決確定時点で契約が成立するとした。一方で支払い義務は「受信機の設置時期にさかのぼって生じる」として男性に21万円の支払いを命じ、双方が上告していた。
 受信料支払いを求める訴訟で過去に放送法を違憲とした司法判断はない。NHKによると、10月25日までに全国で221件の訴訟を起こしたが、契約義務を否定された例もない。15年度の受信料支払率は約77%という。


2016年11月2日

NHK契約義務、憲法判断へ=受信料未払いめぐり―大法廷に回付・最高裁 時事通信 2016年11月2日 19:59


 自宅にテレビがあるのに契約せず、受信料を支払わない男性をNHKが訴えた裁判で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は2日、審理を15人の裁判官全員で行う大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付した。受信契約の義務について、初の憲法判断を示す見通し。
 放送法は、テレビなど放送を受信できる設備を設置した人は「NHKと受信契約をしなければならない」と規定。男性側は、契約は義務ではないとした上で、「義務だとしたら憲法が保障する財産権などを侵害しており違憲」と主張している。
 同様の裁判は多数あり、地裁、高裁段階では「契約の自由は制約するが、公共の福祉に適合している」などとして、合憲とする判決が相次いでおり、最高裁の判断が注目される。
 裁判では、仮に合憲とした場合、どの時点で契約が成立するか▽いつ時点までさかのぼって支払わなければならないか―なども主な争点となっている。


2016年11月2日

NHK受信料制度は合憲か? 最高裁が初判断へ 朝日新聞 2016年11月2日 19:12


 NHKの受信料契約を拒否した男性に、NHKが受信料の支払いを求めた訴訟について、最高裁は2日、15人の裁判官全員による大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で審理することを決めた。「受信設備を設置したらNHKと受信契約を結ばなければならない」と定めた放送法の規定が憲法に違反しないかなど、受信料制度について最高裁が初の判断を示すとみられる。
 一審・東京地裁と二審・東京高裁の各判決は、NHKが受信料の支払いを求める裁判を起こし、判決が受信契約の「承諾」を命じれば契約が成立すると判断。「受信設備を設置した時期にさかのぼって支払わなければならない」として、男性にテレビを設置した2006年以降の受信料として約20万円の支払いを命じた。男性は放送法の規定は契約の自由に反し憲法違反だとも主張したが、一、二審判決とも「公共の福祉に適合し、合憲だ」とした。
 最高裁は合憲と判断した場合、受信契約がどの時点で成立するかや、受信料の支払い義務が発生する時期などについて判断を示すとみられる。


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