長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) リレー方式 2022年春開業
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) で、フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)量産車の生産が 2022年度には間に合わず、国交省は、当面は開発段階で使う車両
1~22編成を使って開業させる案も示されましたが、フリーゲージトレイン(FGT)の開発は、さらに遅れる事態も懸念されていました
その為、長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) でも、鹿児島ルートを整備する時に採用されたように、長崎駅から武雄温泉駅までは新幹線を使い、武雄温泉駅で在来線特急に乗り換えるリレー方式を採用することにより、2022年春の開業を目指すことになりました
博多-長崎間の時間短縮効果は、10分程度と見られていますが、同じホームで乗り換える「対面乗り換え」方式にすれば、博多-長崎間の最短時間は 1時間26分となり、現行の特急での
1時間48分より 22分短縮される見込みです
対面乗り換えのためには、武雄温泉駅のホームの改修、拡幅などが必要で、国交省は、約 70億円の追加費用がかかるとの試算を示しており、国と地元自治体の負担割合については、「関係者間で合意を得て進める」として、具体的な案は示されていません
また、2022年度に開業するには、今月中(2016年3月中)に、武雄温泉駅の設計変更に着手しないと間に合わないとしています
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) リレー方式 工事進捗状況
2016年10月1日現在の工事進捗状況は、下記となっています
用地買収率 94%、工事着手率 96%
(用地買収率は買収済面積÷要買収面積、工事着手率は着工延長÷工事延長)
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート 博多-新鳥栖-武雄温泉-長崎) とは
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート)は、「全国新幹線鉄道整備法」により整備新幹線として整備が決定された 143kmの路線ですが、1973年、武雄温泉-長崎間(約66キロ)は、線路幅が在来線と同じ、「スーパー特急方式」での整備とされ、2012年、フル規格に格上げされて着工が認可、新鳥栖-武雄温泉間は、新幹線とは軌間の異なる長崎線(在来線)をフリーゲージトレイン(FGT
軌間可変電車)として直通する計画として、2022年度の開業が目標とされ、その後、政府、与党では開業時期を 2022年度から「可能な限り」の前倒しする方針でした
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート)は、フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車) 導入を前提に、博多-長崎間を、3つの区間に分けて、整備する計画です
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区間 |
距離 |
整備計画 |
1 |
博多-新鳥栖(佐賀県鳥栖市) |
26km |
新幹線フル規格(線路幅1435ミリ)の九州新幹線鹿児島ルートを共用
時速260キロで走行可能 |
2 |
新鳥栖-武雄温泉(佐賀県武雄市) |
51km |
在来線(線路幅1067ミリ)
線形の良いところ(直線区間)では、時速130キロで走行可能 |
3 |
武雄温泉-長崎 |
66km |
新幹線フル規格(線路幅1435ミリ)で建設
時速260キロで走行可能 |
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)の効果
国土交通省の試算によりますと、九州新幹線 長崎ルートがフリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)で開業した場合、博多−長崎間(約143キロ)は、現行の在来線特急「かもめ」の最速1時間48分から、FGTでは最速1時間20分となり、所用時間が
28分短縮され、鉄道利用者数は、福岡県から約 1.3倍、関西圏から約 1.2倍増えるとされ、観光客増などによる経済波及効果は年間約 71億円と試算されています
国土交通省の当初需要予測では、長崎ルートを走るフリーゲージトレイン(FGT)は、1日31本で、うち14本が山陽新幹線で新大阪まで乗り入れると想定、
総事業費は約 5千億円で、国が3分の2、地元自治体が3分の1を負担することになっていました
国土交通省は、2018年3月30日、山陽新幹線の運行ダイヤは、時速 300キロの車両を中心に編成されていることから、最高時速 270キロのフリーゲージトレイン(FGT)については、ダイヤ編成の面などから山陽新幹線への乗り入れはできないとの判断を示しました
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車) とは
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)とは、車輪をスライドさせることにより車輪の左右の幅(間隔)を変えられる電車で、レール幅の異なる新幹線(軌間
1435ミリ)と在来線(軌間 1067ミリ)の間を直通運転※できる車両で、2022年の量産先行車投入、2025年の実用化を目指していました (※.新(幹線)在(来線)直通運転 = 新在直通運転 )
これまでの技術評価では、新幹線区間では、時速 270キロ、在来線区間では、時速 130キロで安全、安定走行できるとされています
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)は、スペインでは既に実用化されていますが、新幹線並みの高速運転は行っておらず、また、スペインより軌間の狭い日本では、より精密な技術が必要で、1997年から
2017年7月14日現在までに 約 500億円の開発費が投じられています
FGTは、新幹線区間から在来線区間へと、乗り換えなしに目的地に到達できる利便性を持ちますが、同様に新在直通運転を行っている、山形 ・ 秋田新幹線の“ミニ新幹線”方式の場合、貨物列車を別ルートに迂回させることにより、在来線のレール幅を新幹線用レール幅に変更(改軌)し、新幹線車両で在来線走行を実現しました
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート)の場合、在来線を走る貨物列車を迂回させる別ルートが存在せず、また、重要な物流を支える貨物列車を廃止するわけにも行きませんので、在来線区間のレール幅を変更することはできず、どうしても、フリーゲージトレイン(FGT
軌間可変電車)を開発 導入するか、あるいは、在来線を残したままで、新たに、新幹線(用路線)を建設するかの択一になっています
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) フリーゲージトレイン(FGT) 開発動向
長崎新幹線 フリーゲージトレイン(FGT) 収支改善効果 マイナス20億円 2018年3月30日
国土交通省は、2018年3月30日、長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)で、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)が技術的には 2027年度に導入できる見込みであるとする一方、収支改善効果は、年平均で約20億円のマイナスになるとの試算結果を公表しました
試算結果 (2018年3月30日公表)
国土交通省が比較した3つの案。FGTの導入に伴う整備費用は800億円。そのうち700億円は駅施設の改築などでフル規格軌道の整備費と共通する。フル規格の場合、開業見込みは2034年 (資料:国土交通省)
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費用 |
工期 |
開業 |
所要時間 |
収支 |
FGT導入 |
- |
約 9年 |
2027年度 |
約 80分 |
約 -20億円 |
フル規格新幹線 |
約 5300億円 |
約 12年 |
2034年度 |
約 51分 |
約 88億円 |
ミニ新幹線 |
単線並列 |
約 500億円 |
約 10年 |
2032年度 |
約 80分 |
約 9億円 |
複線三線軌 |
約 1400億円 |
約 14年 |
2036年度 |
約 74分 |
約 2億円 |
乗換 |
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約 82分 |
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※. |
単線並列 |
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複線(線路 2本 狭軌)の在来線の内 1本を、新幹線用として標準軌に改軌する
山形新幹線、秋田新幹線で用いられている方式です
ただし、山形・秋田両新幹線は単線の為、在来線電車についても標準軌電車を使用しています
また、秋田新幹線には貨物線(狭軌)との共用区間があるため、一部、複線三線軌条方式が用いられています |
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複線三線軌 |
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複線(線路 2本 狭軌)の在来線それぞれに 1本レールを追加して、狭軌、標準軌で兼用できるようにする方式です
北海道新幹線津軽海峡線区間で用いられています |
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費用 |
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FGTによる整備以降に必要となる費用 |
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工期 |
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想定工期 |
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開業 |
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開業見込み |
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所要時間 |
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長崎~博多間の所要時間 |
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乗換 |
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武雄温泉駅でのFGT対面乗換開業時 |
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収支 |
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年平均の収支改善効果 |
九州新幹線長崎ルート 全線フル規格で建設 与党検討委員会 絞り込み 2019年8月2日
九州新幹線長崎ルートで未着工となっている新鳥栖-武雄温泉(佐賀県)の整備方式について、与党検討委員会は、フリーゲージトレイン(FGT) の導入を断念し、現在建設中の区間と同じフル規格に絞り込む方針を固め、2019年8月5日に開く会合で、与党検討委員会の結論として提示する方針であることが明らかになりました
与党検討委員会は 2019年8月上旬にも沿線の佐賀、長崎両県、営業主体のJR九州に結論を伝える見通しですが、得られるメリットに比して財政負担の大きいフル規格に反対している佐賀県の理解を得るため、国土交通省と両県、JRで協議するよう訴える見通しで、与党は
2019年8月末にまとめる 2020年度予算の概算要求に、着工に先立つ環境影響評価(アセスメント)の費用などを盛り込みたい意向です
長崎新幹線 (九州新幹線) フリーゲージトレイン(FGT) JR九州 導入断念 2017年7月25日
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート)へのフリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)導入について、JR九州は、2017年7月25日、現状では採算面で成り立たず、安全面でも懸念が残る為「FGTによる運営は困難」として断念する意向を正式に表明、FGTに代わり、博多-長崎間の全線でフル規格での整備を求める考えを示しました
長崎新幹線は、佐賀県区間が新幹線路線を建設せずに在来線を利用する為、新幹線と在来線区間を行き来できるFGTの導入が前提になっており、JR九州が断念の姿勢を明確にしたことで、現行の整備計画も、抜本的な見直しを余儀なくされます
JR九州の青柳俊彦社長は、2017年7月25日、与党が開いた委員会に出席、JR側の見解を説明しました
それによると、FGTは一般の新幹線より車両関連費が 2倍前後かかり、全面導入すれば、JRにとって、年間 約 50億円の負担増につながると試算、「前提である収支採算性が成り立たない」とし、また、委員会後、報道陣に対し、安全性も「まだ確立できていない状態」だと述べています
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) FGT 耐久走行試験 再開見送り 2017年7月14日
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)の開発について、国土交通省の技術評価委員会は、2017年7月14日、不具合発生により、約 2年半中断している耐久走行試験について、今(2017年)夏再開を見送る方針を示しました
今回の耐久走行試験の見送り方針により、フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)による 2025年度の長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート)
全面開業は事実上困難となり、開業計画の見直しは必至の状況で、採用計画が白紙となれば、FGT の開発自体も頓挫する可能性が生じてきました
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)は、線路幅の異なる新幹線と在来線を直通できるよう、車輪の左右の幅(間隔)を変えられる電車で、2022年の量産先行車投入、2025年の実用化を目指していました
鉄道 ・ 運輸機構が 2014年に投入した試験車両は、性能確認試験で、新幹線区間 時速 270キロメートル、在来線区間 時速 130キロメートルを達成し、開発は順調に進んでいました
しかし、新幹線と軌間変換、在来線を繰り返して 60万キロメートル走行する、実用化に向けた 『3モード耐久走行試験』を 2014年10月に開始してまもなくの
2014年11月、走行距離 約 3万キロメートルを超えたところで、車軸とすべり軸受の接触部に、想定以上の摩耗が見つかるという不具合が発生、試験を中断しました
約 2年の休止を経て対策を講じ、2016年12月から 2017年3月まで 約 3万キロメートルの検証走行試験を実施しましたが、その結果、技術評価委は「ただちに耐久走行試験に入れない」と判断しました
車軸の摩耗量は、対策前の 約 100分の1に抑制できましたが、目標の走行可能距離 60万キロメートルには達していない部分があり、改良と検証に「年単位の時間がかかる」(国交省)とし、メッキの厚膜化や、すべり軸受の加工精度向上などの追加対策が必要とされました
また、FGT導入の壁だった経済性についても、改善が図られ、これまで新幹線の 3.1倍とされてきたFGTの製造 ・ 保守コストは、1.9倍に抑えられる可能性がでてきましたが、まだ不十分とみられています
この結果について、国交省は「相当程度の改善効果が得られた」との見解を示すものの、高速走行に起因するFGTの不具合について、まだ、FGTの技術的なハードルが高いことも明らかになりました
山陽新幹線 時速 300km 前提 フリーゲージトレイン(FGT) 乗り入れ不可 2016年11月24日
JR西日本の来島達夫社長は、九州新幹線長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)の山陽新幹線への乗り入れについて「難しい面がある」との認識を示しました
フリーゲージトレインの最高時速は 270キロなのに対し、山陽新幹線は最高 300キロで運転しており、JR西 来島社長は、「最高速度(時速 300キロ)を前提にダイヤを組んでおり、ダイヤ構成上、非常に問題は大きい」と理由を説明しています
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) 全線フル新幹線規格案 再燃 2016年3月8日
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)の開発難航を受け、再び、全線フル新幹線規格案が取りざたされています
全線フル新幹線規格で建設した場合、フリーゲージトレイン(FGT)よりも時間短縮効果は大きいのですが、事業費はさらに 5千億円以上かかると見込まれ、地元負担を求められる佐賀県が難色を示した経緯があります
九州新幹線 長崎ルートの路線長は 143kmで、東京-新富士間(東海道新幹線)(146km)、大阪-大垣間(東海道本線)(146km)、に相当する距離です
端(博多)から端(長崎)まで移動する場合のメリットはあっても、途中の佐賀県にとってはメリットが少ないにも関わらず、地元負担だけ(メリットの大きい)福岡県や長崎県と同率の分担を求められても応じかねるところでしょう
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) フリーゲージトレイン 2025年度以降に 2016年3月8日
長崎新幹線 (九州新幹線 長崎ルート) に導入を予定し、開発が進められているフリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)は、2014年10月に実用化に向けた約60万キロの耐久走行試験を始めましたが、2014年11月、走行距離が3万キロを超えたところで不具合が発生、試験を中断しています
フリーゲージトレイン(FGT 軌間可変電車)の開発難航により、車両の量産化が間に合わない見通しとなり、
長崎新幹線(九州新幹線 長崎ルート)の開業時期について、フリーゲージトレイン(FGT)での開業は、当初予定していた 2022年度から 3年以上遅い
2025年度以降となることが明らかになりました
国交省によりますと、量産を前提としない車両(試作車)は、2018年度に設計 ・ 製造を始め、2021年度に完了予定ですが、全面開業で使用される量産車の設計
・ 開発の開始が 2022年度にずれこみ、運転士の訓練などを含めると 2024年度末まで準備に時間がかかるとのことです
また、九州新幹線 長崎ルートと鹿児島ルートの供用区間となる、博多(福岡県)-新鳥栖(佐賀県)間の運行システムの改修も、2024年度末までかかる予定です |
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