北朝鮮 6回目の核実験 威力は広島原爆の 10倍超 約 160キロトン 2017年9月3日
北朝鮮の核実験場がある北朝鮮北東部咸鏡北道吉州(ハムギョンプクドキルジュ)郡豊渓里(プンゲリ)付近で、2017年9月3日午後0時29分頃(日本時間)、爆発によると見られる地震が起き、北朝鮮国営朝鮮中央テレビは、日本時間同
3時半からの「重大報道」を通じて大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全に成功したと発表しました
北朝鮮の核実験は、2016年9月9日の建国記念日以来で、6回目、2017年1月のトランプ米政権発足後は初めてのこととなります
気象庁によると、震源の深さは 0キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は 6.1と推定され、爆発規模は前回核実験 推定 12キロトンの 10倍超で過去最大、澤田哲生
東京工業大助教(原子核工学)は、「規模からして水爆とみていい」としていますが、同時に、「水爆」かどうか検証するには、「核融合で生成されるヘリウム3を観測することが必要」と指摘、ヘリウム3は空気より軽く大気中にすぐ拡散する性質があるため困難で、さらに、「時間がたつほど困難になる」としています
北朝鮮は 2016年1月の核実験で、「試験用水爆」と主張しましたが、米専門家は、爆発規模が小さかったことなどを理由に、米露などが持つ核融合型の水爆ではなく、起爆時に少量の核融合物質を使って核分裂を強める「ブースト型核分裂爆弾」(ブースト型原爆)の可能性が高いとしており、鈴木達治郎
長崎大核兵器廃絶研究センター長は、「今回もブースト型の可能性が高い」としています
菅義偉官房長官は、「詳細は分析中だが、水爆実験だった可能性も否定はできない」と述べ、小野寺五典防衛相は、2017年9月6日、今回の実験の推定出力が
約 160キロトン(TNT(トリニトロトルエン)火薬換算)だったとし、「過去の実験に比べてはるかに大きい」とし、これは、1945年に広島へ投下された原爆
15キロトンの10.7倍にあたり、長崎は 21キロトンだったと説明、「かなりの威力を持つ核実験だったという判断になる。水爆の可能性も否定はできない」と述べています
防衛省は、当初、核実験全面禁止条約機関(CTBTO)準備委員会が核実験当日の 2017年9月3日にマグニチュード(M)5.8とした地震規模の暫定値を基に、爆発威力を
約 70キロトンと推定していましたが、CTBTOが地震規模を M6.0に修正したことを受け 約 120キロトンに上方修正しており、CTBTOが地震規模を
M6.1で確定させたことにより、約 160キロトンに再修正され、確定となりました
日本の気象庁は、地震検知直後から、推定地震規模を M6.1 と発表しており、何故、CTBTOがこのような変節を辿ったのかの検証も必要と思われます
韓国の気象庁は、当初、北朝鮮の核実験場がある北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里で、2017年9月3日午後0時36分、マグニチュード(M)5.6の地震が発生したと発表しましたが、その後、分析を進めた結果として、地震発生時間を午後0時29分に、地震の規模を
M 5.7へと、地震の発生時間も規模も変更するという ・・・ まさか、そんな未熟な値にひきづられた ・・・ なんてことはないことを願いたいものです
これまで、「北朝鮮のミサイルは命中精度が低い」(米ミサイル専門家)との声も聞かれましたが、爆発力が大きくなると、標的からずれたところに打ち込まれても悲惨な結果を招くことになり、たとえ、水爆であろうとなかろうと、威力の大きい核爆弾は、弾道ミサイル技術と合わせて、日米韓にとって大きな脅威です
北朝鮮が「水爆」と主張する実験は、2016年1月6日以来 2回目で、朝鮮中央通信は、開発した核弾頭について、電子機器をまひさせる電磁パルス(EMP)攻撃も可能な多機能弾頭と伝え、北朝鮮核兵器研究所の声明では、水爆実験の爆発力などの指標が設計値に十分に到達したと表明、水爆実験「成功」により、核弾頭の動作の信頼性が確認され、核爆弾の威力を任意に調整できる技術があることが示されたと主張しています
なお、この揺れが観測された 約 10分後にも日本国内の地震計のデータに若干の変化が現れたということですが、振幅が小さく、発生地点やマグニチュードが推定できないなどとして、気象庁は今回、明確に確認された揺れは
1回だったとし、その後の衛星写真により、周辺で、山肌が地滑りを起こし崩れたと思われる痕跡が多数見つかっていることから、その振動を捕らえたものと思われ、北朝鮮の過去の核実験ではそのような地滑りの痕跡は確認されていないことからも、今回の爆発規模の大きさが推定されます
北朝鮮と国境を接するロシア極東沿海地方の気象観測センターは、核実験以降大気中の放射線量の数値に上昇は見られず、正常と発表しました
北朝鮮の核実験 履歴表
回目 |
年月日 |
M |
kt |
「」内 北朝鮮の主張、および、補足 |
首謀者 |
6 |
2017年9月3日 |
6.1 |
160 |
「ICBM搭載用水爆実験成功」 |
金正恩 |
5 |
2016年9月9日 |
5.0 |
10 |
「標準化・規格化された核弾頭の爆発実験成功」 |
4 |
2016年1月6日 |
4.8 |
6 |
「初の水爆実験に成功」 |
3 |
2013年2月12日 |
4.9 |
6~7 |
「小型化成功、爆発力が大きく、軽量化」 |
2 |
2009年5月25日 |
4.5 |
3~4 |
「新段階の爆発力と操縦技術」 プルトニウム型 |
金正日 |
1 |
2006年10月9日 |
3.9 |
0.8 |
「地下核実験に成功」 プルトニウム型 |
※. |
M はマグニチュード : 地震の規模 kt はキロトン (TNT火薬換算) : 爆発の威力 |
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