三宅島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島 |
三宅島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島三宅島火山防災協議会によってまとめられた 「三宅島火山避難計画」 が、2017年4月1日、公表されました 防災にお役立て頂けるよう、下記にその概要 ・ 要点を示します 三宅島火山避難計画 三宅島火山防災協議会 平成29年5月 概要 ・ 要点計画の目的三宅島では、居住地域が活火山の山麓に位置しており、噴火に伴う噴石や溶岩流などの火山現象による影響が噴火開始からごく短時間で居住地域に及ぶが、噴火の兆候から本格的な噴火に至るまでのリードタイムを見積もることは難しい。 また、状況によっては船舶等を利用した島外避難が必要となることも想定されるため、噴火の兆候の認知後、速やかに避難準備に取り掛かり、混乱なく迅速な避難を実施するためには、避難計画をあらかじめ具体的に定めておく必要がある。 本計画は、以上のことを踏まえ、三宅島の火山活動が活発化した場合において、関係機関が協力して住民および来島者の安全を確保し、円滑に避難できるようにすることを目的とする。 計画の位置付け本計画は、三宅島の地域の状況や特性に合った具体的で実践的な避難計画を目指し、三宅島火山防災協議会の構成機関が協議の上、策定するものである。 なお、本計画は、避難に関する基本的な事項について防災関係機関の役割等を示したものであり、噴火時等には、火山活動の状況等に応じて臨機かつ柔軟な対応が必要である。 また、本計画について新たな知見や課題が明らかになった場合には、適宜、修正や充実を図ることとする。 三宅島の概要自然条件三宅島は、東京の南方海上約180㎞に位置する直径8km、面積55.5km2のほぼ円形の島であり、伊豆諸島からマリアナ諸島へ連なる火山島のうちの一つである。島の中央には雄山(標高775m)がそびえ、南部には伊豆七島最大の火口湖である大路池がある。大久保浜、三池浜、錆ヶ浜のように延長約700mにも及ぶ砂浜も有するが、過去に発生した噴火の溶岩による岩場のほか、大部分が高さ20mから50mの海食崖を成している。 気候は、黒潮の影響を受け、温暖多湿な海洋性気候である。年平均気温は約18℃であり、気温の年較差・日較差は小さい。年平均降水量は約3,000mmであり、東京の約1.9倍と多雨である。風向は9月および10月が北東、それ以外は西・西南西・南西が卓越し、風速10m/s以上の強風日数は年間約160日である。台風の伊豆・小笠原諸島への接近数は年間約5個であり、台風のほか、寒候期の季節風、低気圧などの影響により大雨、強風、高波となることが多い。 社会条件村の人口は2,583人、世帯数は1,681世帯であり、集落は島内一円に点在し、大きくは5つの集落(神着、伊豆、伊ヶ谷、阿古、坪田)が形成されている(平成29年1月1日現在)。 島内を一周する道路は、三宅一周道路(都道212号三宅循環線)が唯一であり、公共交通手段として村営バスが運行している。 本土との交通には、海路と空路がある。海路は、東京の竹芝桟橋と大型客船で結ばれ、所要時間は約6時間30分である。空路は、調布飛行場と飛行機、伊豆大島および御蔵島とヘリコプターで結ばれ、所要時間は調布飛行場まで約50分、伊豆大島まで約20分、御蔵島まで約10分である。いずれも、気象状況により船舶の航行や接岸、航空機の航行に影響がでることもある。 来島者は年間約4万5千人であり、宿泊施設(旅館、民宿、バンガロー、キャンプ場)は38か所(総収容者数833人)である(平成28年3月31日現在)。 三宅島火山の概要
15世紀以降、中規模以上の噴火が13回発生しており、間隔は17~69年である。有史時代の活動は、山頂から北-東南東、西-南南西の方向の山腹の割れ目火口からの短期間の噴火であり、時に山頂噴火を伴う。スコリアの放出・溶岩流出のほか、割れ目火口が海岸近くに達したときは海岸付近では激しいマグマ水蒸気噴火が起こりやすい(1983年噴火等)。 噴火前後に地震活動を伴うが、地震活動域と噴火地点とは一致しないことがある。2000年噴火では、島内で始まった地震活動が徐々に西方沖に移動して海底噴火に至り、その後山頂直下の地震活動が始まり、山頂噴火・カルデラ形成へと推移した。1983年噴火では、前年から南方海域での群発地震活動等があり、噴火直前の地震活動は噴火開始の1時間半前からであった。 1962年噴火等、過去のいくつかの噴火では、噴火後に有感地震が頻発した。2000年6月に始まった噴火活動では、山頂噴火が発生するとともにカルデラを形成し、さらに高濃度の二酸化硫黄を含む火山ガスが長期間にわたって大量に放出された。 ※大規模噴火、中規模噴火、小規模噴火を分ける閾値は、それぞれ4000万DREm3、40万DREm3とした。なお、「DRE」とは、マグマ噴火やマグマ水蒸気噴火による総噴出物量をマグマの容積に換算したものである。 (参考:日本活火山総覧(第4版)三宅島,p976 ,気象庁(2013)) 三宅島火山の火口分布三宅島火山の火口分布は、八丁平カルデラを中心とした山頂火口と、山頂から北-東南東、西-南南西の方向の山腹割れ目火口で特徴付けられる。また、割れ目火口が海岸付近まで拡大した際には、マグマ水蒸気噴火に伴う爆裂火口(マール)が形成されることが多い。 三宅島火山の噴火様式別の火口分布は、下図のとおりである。
三宅島 火山地質図火山地質図とは、過去の噴火活動で形成された地層の分布等を示した地図であり、火山噴出物分布や噴火規模等の火山活動を想定するための基礎資料となる。 三宅島火山地質図 (津久井ほか,2005) / 三宅島火山地質図 凡例 (津久井ほか,2005を改変) 三宅島想定される火山活動等想定される火山活動火口位置三宅島では、2000年噴火以前は山腹噴火の頻度が高かったが、2000年噴火における陥没カルデラの形成により、山頂噴火の可能性が高くなった。また、山腹噴火が発生する場合は、カルデラ底の標高よりも低い場所で発生する可能性が高いと考えられる。 噴火特性(火山現象、噴火様式など)三宅島火山の噴火特性は、次のとおりである。 ◯ 最近の噴火は、スコリアの放出と溶岩の流出が主である。 ◯ 2000年噴火では、マグマの側方貫入に伴い山頂が陥没し、水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火により細粒火山灰が放出された。また、大量の火山ガスが長期間放出された。 ◯ 山頂噴火がマグマ噴火になるかマグマ水蒸気噴火になるかは、現時点では判断が困難である。大規模な水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火の場合は、山腹にまで大きな噴石が飛散し、火砕流が発生する可能性がある。 ◯ 海岸近くや浅い海底で噴火が発生する場合は、爆発的なマグマ水蒸気噴火を起こすこともある。マグマ水蒸気噴火が発生する可能性のある陸域の標高および海域の水深は、次のとおりである。 陸域:標高200m以下 海域:水深100m以浅(火砕サージ発生)、水深400m以浅(海面に噴煙等) ◯ 現在は、カルデラ内の南縁近くに火孔が開口しており、今後しばらくの間は、山頂噴火時に溶岩がカルデラ外に溢流する可能性は低い。 想定される噴火ケースと火山現象三宅島火山で想定される噴火ケースおよび各ケースで想定される災害要因となる火山現象は、次のとおりである。 なお、カルデラ形成噴火は、避難計画およびマニュアル編においては山頂噴火に含める。
三宅島 火山ハザード(防災)マップ火山ハザードマップとは、各火山災害要因(大きな噴石、溶岩流など)の影響が及ぶおそれのある範囲を地図上に特定し、視覚的に分りやすく描画したものである。また、火山ハザードマップに、防災上必要な情報(避難先等に関する情報、噴火警報等の解説、住民等への情報伝達手段など)を付加したものを火山防災マップという。 三宅島火山では、三宅島火山防災マップ(下図)が作成されているほか、「溶岩流」および「降灰後土石流」については、「三宅島火山噴火危険範囲予測図作成のための検討委託(東京都建設局河川部, 2016)」において数値シミュレーションが実施されている。 また、「火山ガス」について、三宅村による観測データを基に平成17年度以降の二酸化硫黄ガス濃度の分布を整理したものを示す。 ※下図の電子データは、防災科学技術研究所のHPから取得できる。 (https://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/L_read/62miyakejima/62miyake_1h01-L.pdf) 三宅島火山防災マップ (三宅村,1994) 三宅島 噴火警戒レベル噴火警戒レベルとは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分した指標である。 噴火警戒レベルが運用されている火山では、火山防災協議会で合意された避難計画等に基づき、気象庁は「警戒が必要な範囲」を明示し、噴火警戒レベルを付して噴火警報・予報を発表し、市町村等の防災機関は入山規制や避難勧告等の防災対応をとる。 (平成29年5月) 三宅島 噴火警戒レベル と 避難対応の目安 立入規制の範囲
三宅島 立入規制範囲図 および 規制箇所(山頂噴火)三宅島 立入規制範囲図 および 規制箇所(山頂噴火) 三宅島 防災関連施設等の位置図三宅島 防災関連施設等の位置図 三宅島火山噴火 避難実績三宅島火山の噴火に伴う避難実績について、避難記録がまとめられている3回の噴火(1962年噴火、1983年噴火、2000年噴火)の避難の状況を次表に示す。
(参考:昭和37年三宅島噴火災害誌,p108‐109,東京都(1964)、記録昭和58年三宅島噴火災害,p161‐167,東京都(1985)、 三宅島火山の噴火履歴三宅島火山の形成史、有史以降の火山活動、累積噴出物量、火口分布、火山地質図、災害実績、避難実績を以下に示す。 形成史三宅島火山の活動は、カルデラの形成や休止期をもとに、5つの活動期に区分される。
(参考:三宅島火山地質図,p2-3,津久井ほか(2005)) 三宅島火山の有史以降の火山活動三宅島火山の有史以降の火山活動について、噴火年代、噴火規模、噴火様式、噴火場所、活動経過・発生現象を整理し、次表に示す。
(参考:日本活火山総覧(第4版)三宅島,p982-984,気象庁(2013)、火山噴火予知連絡会会報 第114号,気象庁(2013)、火山噴火予知連絡会会報 第115号,気象庁(2013))、Nakada,et.al.(2005)) 火山用語
(参考) 以上、「三宅島火山避難計画 三宅島火山防災協議会 平成 29年5月」からの要約 ・ 抜粋です |
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