伊豆大島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島 |
伊豆大島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島伊豆大島火山防災協議会によってまとめられた 「伊豆大島火山避難計画」 が、2017年4月1日、公表されました 防災にお役立て頂けるよう、下記にその概要 ・ 要点を示します 伊豆大島火山避難計画 伊豆大島火山防災協議会 平成29年5月 概要 ・ 要点計画の目的伊豆大島では、居住地域が活火山の山麓に位置しており、噴火に伴う噴石や溶岩流などの火山現象による影響が噴火開始からごく短時間で居住地域に及ぶが、噴火の兆候から本格的な噴火に至るまでのリードタイムを見積もることは難しい。 また、状況によっては船舶等を利用した島外避難が必要となることも想定されるため、噴火の兆候の認知後、速やかに避難準備に取り掛かり、混乱なく迅速な避難を実施するためには、避難計画をあらかじめ具体的に定めておく必要がある。 本計画は、以上のことを踏まえ、伊豆大島の火山活動が活発化した場合において、関係機関が協力して住民および来島者の安全を確保し、円滑に避難できるようにすることを目的とする。 計画の位置付け本計画は、伊豆大島の地域の状況や特性に合った具体的で実践的な避難計画を目指し、伊豆大島火山防災協議会の構成機関が協議の上、策定するものである。 なお、本計画は、避難に関する基本的な事項について防災関係機関の役割等を示したものであり、噴火時等には、火山活動の状況等に応じて臨機かつ柔軟な対応が必要である。 また、本計画について新たな知見や課題が明らかになった場合には、適宜、修正や充実を図ることとする。 伊豆大島火山防災マニュアルの継承伊豆大島については、町、支庁、警察署、火山防災連絡事務所の実務者で構成される大島町四者懇談会実務者会議において、火山防災対策の協議を行い、噴火時等における防災対応の連携を目的とした「伊豆大島火山防災マニュアル」を、平成21年度に作成(平成23年度に修正)している。 当該マニュアルは、噴火警戒レベルごとに、想定される火山現象・影響範囲、4機関の防災態勢・防災対応を、住民、災害時要援護者、観光客の区分ごとに整理したものであり、本計画が策定されるまでの間、避難計画として位置付けられていた。 本計画は、当該マニュアルを基に、より具体的で実践的な避難計画となるよう、火山専門家による助言を受けつつ、噴火ケースの細分化、気象庁による噴火警戒レベル判定基準の精査内容の反映などを行ったほか、社会環境の変化や4機関以外の関係機関も加えた共同検討の結果を踏まえ、項目の追加や内容の修正などを行い、作成したものである。 伊豆大島の概要自然条件伊豆大島は、東京の南方海上約110kmに位置する東西9km、南北15km、周囲52km、面積90.76km2の伊豆諸島最大の島であり、伊豆諸島からマリアナ諸島へ連なる火山島のうち最も北に位置する島である。島の中央には三原山(標高758m)がそびえ、南西部と北部から東部にかけては高さ最大350m(東部)に達する海食崖が発達しているが、西部は勾配の緩やかな平地である。 気候は、黒潮の影響を受け、気温の年較差・日較差が小さい温暖多湿な海洋性気候である。年平均気温は約16℃であり、年平均降水量は約2,800mmと多雨である。風向は北東・西・南西が卓越して全体の9割を占め、風速10m/s以上の強風日数は年間の3分の1に達する。台風は、年平均で2~3個が接近する。寒候期の季節風、春と秋の発達した低気圧、夏から秋にかけての台風の影響により、強風・高波となることが多い。 社会条件町の人口は8,015人、世帯数は4,752世帯であり、海岸に沿って7つの集落(元町、北の山、岡田、泉津、野増、差木地、波浮港)が形成されている(平成29年1月1日現在)。 島内を一周する道路は、大島一周道路(都道208号大島循環線および都道207号大島公園線の一部)が唯一であり、公共交通手段として、大島旅客自動車が路線バスを運行している。 本土との交通には、海路と空路がある。海路は、東京の竹芝桟橋と大型客船および高速ジェット船で、熱海と高速ジェット船で結ばれている。空路は、調布飛行場と飛行機で、利島および三宅島とヘリコプターで結ばれている。 来島者は年間約22万人であり、宿泊施設(ホテル、旅館、ペンション、民宿)は62か所(総収容者数2,231人)である(平成29年1月1日現在)。 伊豆大島火山の概要
数万年前から活動を始め、約1700年前には山頂部で大規模な水蒸気噴火が発生し、陥没してカルデラを形成した。約1500年前にも大規模な噴火が起こり、山頂部に相接して複数のカルデラが生じたと考えられている。その後の噴火による溶岩は、カルデラ底を埋積しながら北東方向に流下し、海岸に達した。 カルデラ形成後、1回の噴出量が数億トンの大規模噴火が10回発生し、最後の大規模噴火は1777年の噴火であった。噴出量数千万トン程度の中規模噴火は、近年では1912年、1950年、1986年に発生しており、間隔は36~38年である。また、それらの間に20回以上の小規模噴火があった。大規模噴火の時には、初期にスコリア放出・溶岩流出、その後に火山灰の放出が長期間(10年程度)続いたと考えられている。中規模噴火はスコリア放出・溶岩流出、小規模噴火は噴石・火山灰を放出する。ストロンボリ式噴火が特徴であるが、マグマ水蒸気噴火も起きている。 1552~1974年の噴火は三原山火口か、その周辺のカルデラ底で発生したが、1986年噴火は三原山火口内(A火口)と割れ目火口(カルデラ底:B火口、カルデラ縁外側の北山腹斜面:C火口)で起こった。噴火前兆あるいは活動と関係する地殻変動、地震・微動、地磁気、比抵抗、重力などの変化が観測されている。 ※大規模噴火、中規模噴火、小規模噴火を分ける閾値は、それぞれ4000万DREm3、40万DREm3とした。なお、「DRE」とは、マグマ噴火やマグマ水蒸気噴火による総噴出物量をマグマの容積に換算したものである。 (参考:日本活火山総覧(第4版)伊豆大島,p909,気象庁(2013)) 伊豆大島火山の火口分布伊豆大島火山の火口分布は、カルデラを中心とした山頂火口と、北北西-南南東方向に配列する側火山および割れ目火口により特徴付けられる。活動の中心は、先カルデラ火山活動期では島北西部から南東部に広く渡り、カルデラ形成・後カルデラ火山活動期ではカルデラ周辺および島南東部へと変遷している。 また、北西側および南東側に、それぞれ海岸線から10km以上離れた海底まで側火山が分布している。南東側は水深400mより浅い領域に大型の海底火砕丘を作っているのに対し、北西側は400mより深く大型の火砕丘は少ない。
伊豆大島周辺の海底側火山分布図 (Ishizuka et al,2014) 伊豆大島 火山地質図火山地質図とは、過去の噴火活動で形成された地層の分布等を示した地図であり、火山噴出物分布や噴火規模等の火山活動を想定するための基礎資料となる。
伊豆大島想定される火山活動等想定される火山活動火口位置伊豆大島火山では、山頂噴火の可能性が最も高いが、山腹から割れ目噴火をすることも想定される。なお、山腹噴火は、山頂から北北西-南南東方向に伸びる帯状の領域で発生する可能性が高い。 噴火特性(火山現象、噴火様式など)伊豆大島火山の噴火特性は、次のとおりである。 ◯ 山頂噴火の場合、中規模噴火や大規模噴火では、大量の噴石と火山灰が噴出し、溶岩が流出する。 ◯ 溶岩の粘性が低いため、山腹を流下する場合は、短時間で山麓および海岸部に達する可能性がある。 ◯ 海岸近くや浅い海底で噴火が発生する場合は、爆発的なマグマ水蒸気噴火を起こすこともある。マグマ水蒸気噴火が発生する可能性のある陸域の標高および海域の水深は、次のとおりである。 陸域:標高100m以下(南東側)、標高150m以下(北西側) 海域:水深100m以浅(火砕サージ発生)、水深400m以浅(海面等に噴煙) ◯ 数千年に1回程度の頻度で、山頂部での大規模な水蒸気噴火を伴うカルデラ形成噴火が発生する。山頂部で大規模な水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火が発生した場合は、山麓にまで大きな噴石が飛散し、火砕流が発生する可能性がある。 ◯ 過去1万年間、平均約150~200年間隔で大規模噴火が発生したが、安永噴火以降は中・小規模の噴火しか起こっていない。 想定される噴火ケースと火山現象伊豆大島火山で想定される噴火ケースおよび各ケースで想定される災害要因となる火山現象は、次のとおりである。 なお、カルデラ形成噴火は、避難計画およびマニュアル編においては山頂噴火に含める。
伊豆大島 火山ハザード(防災)マップ火山ハザード(防災)マップとは、各火山災害要因(大きな噴石、溶岩流など)の影響が及ぶおそれのある範囲を地図上に特定し、視覚的に分りやすく描画したものである。また、火山ハザードマップに、防災上必要な情報(避難先等に関する情報、噴火警報等の解説、住民等への情報伝達手段など)を付加したものを火山防災マップという。 伊豆大島火山では、伊豆大島火山防災マップが作成されているほか、「溶岩流」および「降灰後土石流」については、「伊豆大島火山噴火危険範囲予測データベース作成委託(東京都建設局河川部, 2012)」において、数値シミュレーションが実施されている。 ※下図の電子データは、防災科学技術研究所のHPから取得できる。 (https://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/L_read/58izu-oshima/58izu-o_1h01-L.pdf) 伊豆大島火山防災マップ (大島町,1994) 伊豆大島 噴火警戒レベル噴火警戒レベルとは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分した指標である。 噴火警戒レベルが運用されている火山では、火山防災協議会で合意された避難計画等に基づき、気象庁は「警戒が必要な範囲」を明示し、噴火警戒レベルを付して噴火警報・予報を発表し、市町村等の防災機関は入山規制や避難勧告等の防災対応をとる。 (平成29年5月) 伊豆大島 噴火警戒レベル と 避難対応の目安 立入規制の範囲
噴火警戒レベル1(山頂噴火) 立入規制図噴火警戒レベル2(山頂噴火) 立入規制図噴火警戒レベル3(山頂噴火) ①カルデラの中だけに重大な影響 立入規制図噴火警戒レベル3(山頂噴火) ②カルデラの外まで重大な影響 立入規制図噴火警戒レベル4(山頂噴火・山腹噴火) 立入規制図噴火警戒レベル5(山頂噴火・山腹噴火) 立入規制図伊豆大島 防災関連施設等の位置図伊豆大島 防災関連施設等の位置図 伊豆大島 火山噴火 避難実績伊豆大島火山の噴火に伴う避難実績について、記録がまとめられている1986年噴火の島外避難の状況を次表に示す。
※静岡県内避難者は、11月23日、24日に都内へ受入れ。 ≪参考:1777 年噴火(安永噴火)≫避難実績ではないが、安永噴火(1777~1792年)の噴火期間中に、当時の伊豆代官が、現地見分と島役人たちへの照会をもとに作成した避難計画(「安永七戌年島方御用留」十一月、十二月届出文書)が、記録として残されている。 (参考:伊豆大島火山:史料に基づく最近3回の大規模噴火の推移と防災対応, p99-100,津久井雅志・段木一行・佐藤正三郎・林幸一郎(2009)) 伊豆大島火山の噴火履歴伊豆大島火山の形成史、有史以降の火山活動、累積噴出物量、火口分布、火山地質図、災害実績、避難実績を以下に示す。 形成史伊豆大島火山の活動は、現在のカルデラ地形形成以前の先カルデラ火山の形成と、カルデラ形成・後カルデラ火山の形成の2つに区分できる。 先カルデラ火山先カルデラ火山の活動は、古期山体の形成と新期山体の形成に細分される。古期山体の形成は、約3~4万年前に海底噴火活動で始まった。この活動は、粗粒な火砕物を主とし、少量の玄武岩溶岩流、降下火砕物を伴う。新期山体の形成は約2万年前から始まり、降下スコリア堆積物、溶岩流からなり、古期山体の上を覆って厚く堆積している。 カルデラ形成・後カルデラ火山現在見られるカルデラは、約1700~1500年前に起こった山頂部での爆発的噴火により最終的な地形が作られた。カルデラ形成・後カルデラ火山では、噴出量が数億トンの大規模噴火が10回起きている。噴出量は、19世紀以降の中・小規模噴火より一桁大きい。 (参考:伊豆大島火山地質図,p3,川辺(1998)) 伊豆大島火山の有史以降の火山活動伊豆大島火山の有史以降の火山活動について、噴火年代、噴火規模、噴火様式、噴火場所、活動経過・発生現象を整理し、次表に示す。
(参考:日本活火山総覧(第4版)伊豆大島,p916-923,気象庁(2013)) 火山用語
(参考) 以上、「伊豆大島火山避難計画 伊豆大島火山防災協議会 平成 29年5月」からの要約 ・ 抜粋です |
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