海上自衛隊 救難飛行艇 US-2
2015年2月末、日本の新明和工業が開発し海上自衛隊で使用されている救難飛行艇「US-2」について、インド国防省が導入の本格的な検討に入ったという報道が相次ぎました
「飛行艇」とは、胴体を水面に接する形で水面上で離発着可能な飛行機のことで、US-2は、前作US-1と同様、引き込み式の車輪を備え、陸上基地からの運用も可能です
太平洋戦争において、日本海軍は、日本が実用化した数少ない国産4発機である川西航空機開発の4発大型飛行艇、「二式大艇」を偵察や輸送など様々な任務に供しました
川西飛行機は戦後、新明和工業となり、海上自衛隊向けの対潜飛行艇「PS-1」とその救難型である「US-1」「US-1A」を開発しました
その後、対潜、および、哨戒任務は、専ら「P-3C オライオン」等通常型の(対潜)哨戒機で行われる運用となったため、US-2からは、PS/US-1系にあった対潜哨戒任務がはずされ、救難専用機として開発され、操縦を機械的な連動ではなく電気信号で伝える「フライ・バイ・ワイア」や、速度や高度といった操縦に必要な主要情報を液晶画面に表示する「グラス・コクピット」の導入、キャビン内も完全与圧式とするなどの改良が加えられています
US-2は、1991(平成3)年から計画が進められ、2003(平成15)年12月12日、初号機が初飛行に成功、試作2号機と合わせテストが繰り替えされ、現在は5機が完成
外洋での救難任務に就いています
2015(平成27)年1月23日には、小笠原諸島の父島から神奈川県の厚木航空基地まで急患を輸送するなど、離島の救護活動も担っています
最大速 力 |
315kt |
機体 |
約 33.2m x 33.3m x 9.8m (幅×長×高) |
全備重量 |
約 47,700kg |
乗 員 |
11名 |
発動機 |
AE2100J 4,591馬力 × 4基 |
離着水能力 |
波高 3m |
調達価格 |
約 130億円 |
調達機数 |
5機 |
インド国防省導入計画
インドは飛行艇導入に関し、長らく友好関係を保っているロシア製のべリエフ「Be-200」なども候補と見られていました
救難機に必要な「救難地点までの進出速度」という点ではジェットエンジンのBe-200が有利ですが、Be-200が着水可能なのは波高1.2mまでで、US-2が持っている荒れた外洋での離着水能力やはるかに長大な航続性能、導入されている数々の最新技術などからUS-2が最有力候補になったと考えられます
US-2が輸出されると戦後初の国産軍用機(自衛隊用機)輸出となりますが、インドが購入した機体を救難以外の軍事用に用いないような施策等も必要で、また、インドはUS-2を完成品の輸入だけではなく、自らライセンス生産できる権利も求めているとされ、調整すべき課題はまだたくさん残っていますが、日本の優れた航空機技術の輸出は、今後の技術発展を大きく後押しする事にもなりますので、ぜひとも実現して欲しいところです
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