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笠堀ダム 堤体かさ上げ 2017年度完成 ダム 改造方式 既存ダム改造


笠堀ダム 堤体かさ上げ 2017年度完成 ダム 改造方式 既存ダム改造



既存ダムの堤体の上部に、新たにコンクリートを打設して天端高さを上げ、洪水調節容量を増やす手法で、北海道内で国交省が事業を進めている新桂沢ダムや、新潟県が工事を進める笠堀ダムが、この手法を採用する代表例と言えます


笠堀ダム 笠堀ダム

新潟県:笠堀ダム 」 より



笠堀ダム全景

笠堀 ダム全景

笠堀ダム 位置図 (流域図)

笠堀ダム 位置図 (流域図)

新潟県:笠堀ダム 」 より



笠堀ダムは、五十嵐川支川、笠堀川に位置し、洪水調節、上水道、農業用水及び水力発電を目的として、三条市笠堀に多目的ダムとして 1964年(昭和39年)9月に完成、新潟県営ダムでは、三面ダムに続いて 2番目に古い歴史を持っています

笠堀ダムの構造は重力式コンクリートダムで、高さ 74.5メートル、総貯水容量 15,400,000立方メートル、有効貯水容量 13,300,000立方メートルです


笠堀ダムでは、2011年(平成23年)新潟福島豪雨災害による五十嵐川災害復旧助成事業で、ダムの高さを 4m嵩上げし、洪水調節容量を 870万立方メートルから 1,050万立方メートルに、180万立方メートル増やし、洪水調節能力の強化を図り、下流への流下量を低減させる事業が進められています



笠堀ダムの2015年4月14日時点の施工状況。下流側堤体上部に仮設構台を設置して、かさ上げ・増し打ちコンクリートの準備を進めているところ
笠堀ダム 嵩上げ工事 2016(平成28年)7月撮影
笠堀ダム 嵩上げ工事 施工状況
2015年(平成27年)4月14日 撮影

下流側堤体上部に仮設構台を設置して、かさ上げ ・ 増し打ちコンクリートの準備を進めているところ

豪雨で脚光浴びるダム改造 日経コンストラクション 2016/06/21 」 より



笠堀ダム 嵩上げ工事 施工状況
2016(平成28年)7月 撮影


新潟県:笠堀ダム 」 より





笠堀ダム 嵩上げ工事 は、2014年(平成26年)に着手し、2016年07月29日現在、ダム乗入れ県道の嵩上げ(一部完成)、コンクリート製造設備の設置、管理棟移築、ダム放流の勢いを減少させる減勢工、1号ゲートの交換が完了しています

ダム本体のコンクリート打設も本格化、非洪水期には 2号ゲートの交換を行う予定で、完成は 2017年度(平成29年度)が予定されています



既設の笠堀ダムをかさ上げする工事の概要と洪水調節容量の変化

既設の笠堀ダムをかさ上げする工事の概要と洪水調節容量の変化

笠堀ダムの既設提体を高さ方向に 4mかさ上げして、下流水平方向に 2m増し打ち(図の薄オレンジ色部分)、
それに伴い、減勢工の一部を切削して、新設コンクリートを増し打ち ・ かさ上げする他、ゲート 2門を更新する
それらによって、ダムの洪水調節容量は、現状の 870万m3/s から 1050万m3/s に増強される

(資料:鹿島・福田組・小柳建設JV)




かさ上げの場合、現場の地質や地形などの条件を考慮する必要があります

上水道や農業用水、水力発電といった用途に用いる多目的ダムである笠堀ダムは、重力式コンクリートダムで、堤体の高さが 74.5m、必要な治水機能をダムだけで確保しようとすると堤体を 10m以上かさ上げする必要がありました


しかし、現場の上層の地層がやや弱いうえに、地形上の理由も重なり、堤体重量を大幅に増やす手法の採用が難しかった為、そこまでのかさ上げはできませんでした

そこで、笠堀ダムでは、堤体の高さを少しずつ変えた場合の洪水調節容量などを算定したうえで、高さを 4mかさ上げして河道改修といった対策を組み合わせる方法が採用されました


笠堀ダムのかさ上げ工事では、堤体の重量を確保するために、下流側の堤体にコンクリートを増し打ちし、堤体の上部から約 45mの範囲で、水平方向に厚さ 2mのコンクリートを施工、堤体のコンクリート量は約 2万m3増え、既存のダムで 4mだった天端の幅も 2m広がり、6mとなります

この改造の事業費は 51億円で、ダムの洪水調節容量は毎秒 870万m3から毎秒 1050万m3に増える予定で、2014年度に始まった工事は、2017年度まで続く見通しとなっています



笠堀ダムに連絡する県道はダム嵩上げ工事のため、2014年(平成26年)4月22日から当分の間、終日全面通行止めとなります




笠堀ダムの洪水調節方式


一定開度放流方式 (ゲートダム)


笠堀ダムの洪水調節方式 一定開度放流方式 (ゲートダム) 笠堀ダムの洪水調節方式 一定開度放流方式 (ゲートダム) 洪水調節効果

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より



笠堀ダムには3つのゲート(とびら)があり、このゲートの開く量を調節して下流に流す水の量を調節しています
ダムへの流入量が洪水調節開始流量に達した後は、ゲート開度を一定に保ち自然調節で放流します

※.流入量とはダム湖に流れ込む水の量、放流量とはダムから下流に流す水の量のことをいいます

特徴 洪水調節開始流量以降はゲート操作が必要ありませんので、一般的で中小流域のダムに用いられます
最も一般的で、中小洪水の場合にもダムの洪水調節効果が期待できます




笠堀ダムの洪水調節の手順



操1 洪水に備える



笠堀ダムの洪水調節の手順 操1 洪水に備える

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より

台風や大雨による洪水の起きやすい季節には、事前にダムの水位を下げてダムの洪水調節容量を作っておき、洪水の水をダムの中にためるための準備をします



操1-1 洪水に備える(予備放流)



笠堀ダムの洪水調節の手順 操1-1 洪水に備える(予備放流)

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より

天候の悪化により洪水が予想される場合には、操1で洪水に備えて水位を低下させた状況(制限水位)から、ダムの洪水調節容量(洪水をためられる量)が最大となる水位(予備放流水位)まで、ダム貯水池の水位をさらに低下させて洪水に備えます



操2 洪水をためこむ



笠堀ダムの洪水調節の手順 操2 洪水をためこむ

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より

大雨が降り洪水になると、ダムへの流入量の一部を貯水池にため、下流に流しても安全な水量だけをダムから流します


ダムから下流に流す水の量は、操1の洪水に備えている時の放流量より増えます


このとき、ダムからの放流によって下流の河川の水位に急激な上昇がおこると予想される場合には、事前にダムからスピーカー、サイレン等で川からの避難を呼びかけます



操3 計画規模を超える洪水への対応



笠堀ダムの洪水調節の手順 操3 計画規模を超える洪水への対応

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より

異常な豪雨により、ダム建設時の計画よりも大きな洪水がダム貯水池に流れ込むことがあります


ダムでも可能な限り操2のように洪水をためながら、下流への安全放流を維持するゲート操作を行いますが、ダムにためることができる水量には限界があります


洪水をこれ以上ためると、ダムが壊れる恐れがあるというときには、下流に流す量を徐々に増加させ、貯水池に入ってくる水量と同じ水量を下流に流すようにして、ダムの天端からあふれないように放流します

(ダムが無い自然な状態と同じです)


ダムの操作は、各ダムごとに定められている操作規則にもとづいておこなわれています

そして通常の洪水調節は「笠堀ダムの洪水調節方式」のように操作をおこないますが、計画規模を超えるような異常な洪水のときには、操作規則に「ただし、気象 ・ 水象その他の状況により、特に必要と認める場合においては・・・」とあり、その場合は、ただし書き操作要領にもとづいて操3のような操作をおこないます

これを「ただし書き操作」と呼んでいます



操4 次の洪水に備える



笠堀ダムの洪水調節の手順 操4 次の洪水に備える

新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ 」 より

大雨が止み、洪水が過ぎ去ると、ダムに流れ込む水量も少なくなります


貯水池は、洪水を調節した水量だけ水位が上昇していますので、次の洪水に備えて下流の河川の状況を見ながらためていた水を放流し、水位を下げ貯水池の容量を定められた洪水調節容量に戻します




改造 ・ 改良による 既存ダム機能 ・ 有用性向上手法について

新たなダムを建設していくことは、物理的、地理的要因の他に、環境面の問題等もあって、現在の日本国内では、非常に困難なことになってきており、既存のダムを、改造、改良することにより、その機能、有用性を高めていくという手法に注目が集まってきています
経年によるインフラの老朽化が社会的な関心を集めるなか、既存施設をリニューアルして将来も役立てていこうという手法は、社会的理解の獲得という点でも有効です
国が管理するダムを中心に、現在、様々な改造事業が進んでおりますが、ダムの改造は、既存施設を運用しながら工事しなければならないという問題があり、技術的に難度の高い工事となります
その為、一口にダム改造と言っても、その内容、形態には様々な手法が存在、開発されてきています
国交省では、ダムの再開発技術をインフラ海外輸出のツールの一つに位置付けたいとの考えのもと、既に英文パンフレットを作成したり、2国間の防災協働対話などで改造技術のアピールを図ったりしています

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参考情報


新潟県:笠堀ダム
新潟県:笠堀ダムの洪水調節のしくみ
ダム - Wikipedia

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関連記事

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関連記事を下記に紹介します



2016年6月21日

豪雨で脚光浴びるダム改造 日経コンストラクション 2016/06/21


 ダムは「税金の無駄遣い」、「自然破壊」といったレッテルを貼られがちのインフラの代表格と言えるでしょう。構造物を造る箇所は、自然豊かな山間部になりますし、事業期間が長期にわたるので、当初の建設計画と実際に完成に至った時とでは、事業費や利水ニーズなどが大きく変わることが多いからです。
 しかし、ダムの重要性が見直される機運が出始めています。豪雨が多発する半面、降雨が少ない時期が目立ち始めるなど、極端な気象が数多く襲い掛かっているからです。気象庁が示す観測結果では、大雨の観測回数は長期的に上昇トレンドを描いており、今後の予想でも、大雨の発生頻度は増すと見込んでいます。
 豪雨による被害は、ダムだけでは防げません。それでも、ダムが川の流域の安全性を高めている点は、これまで以上に無視できなくなっています。
 このところ、国土交通省はダムの効用を広く伝えようという姿勢を強く打ち出しています。近年の豪雨では、ダムの活用による治水効果を具体的な数字を交えて積極的に公表。その重要性をアピールしています。

豪雨で脚光浴びるダム改造 日経コンストラクション 2016/06/21 」 より


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