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三宅島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島


三宅島 火山避難計画 概要 ・ 要点 伊豆諸島



三宅島火山防災協議会によってまとめられた 「三宅島火山避難計画」 が、2017年4月1日、公表されました
防災にお役立て頂けるよう、下記にその概要 ・ 要点を示します




三宅島火山避難計画 三宅島火山防災協議会 平成29年5月 概要 ・ 要点



計画の目的



三宅島では、居住地域が活火山の山麓に位置しており、噴火に伴う噴石や溶岩流などの火山現象による影響が噴火開始からごく短時間で居住地域に及ぶが、噴火の兆候から本格的な噴火に至るまでのリードタイムを見積もることは難しい。

また、状況によっては船舶等を利用した島外避難が必要となることも想定されるため、噴火の兆候の認知後、速やかに避難準備に取り掛かり、混乱なく迅速な避難を実施するためには、避難計画をあらかじめ具体的に定めておく必要がある。

本計画は、以上のことを踏まえ、三宅島の火山活動が活発化した場合において、関係機関が協力して住民および来島者の安全を確保し、円滑に避難できるようにすることを目的とする。



計画の位置付け



本計画は、三宅島の地域の状況や特性に合った具体的で実践的な避難計画を目指し、三宅島火山防災協議会の構成機関が協議の上、策定するものである。

なお、本計画は、避難に関する基本的な事項について防災関係機関の役割等を示したものであり、噴火時等には、火山活動の状況等に応じて臨機かつ柔軟な対応が必要である。

また、本計画について新たな知見や課題が明らかになった場合には、適宜、修正や充実を図ることとする。




三宅島の概要



自然条件



三宅島は、東京の南方海上約180㎞に位置する直径8km、面積55.5km2のほぼ円形の島であり、伊豆諸島からマリアナ諸島へ連なる火山島のうちの一つである。島の中央には雄山(標高775m)がそびえ、南部には伊豆七島最大の火口湖である大路池がある。大久保浜、三池浜、錆ヶ浜のように延長約700mにも及ぶ砂浜も有するが、過去に発生した噴火の溶岩による岩場のほか、大部分が高さ20mから50mの海食崖を成している。

気候は、黒潮の影響を受け、温暖多湿な海洋性気候である。年平均気温は約18℃であり、気温の年較差・日較差は小さい。年平均降水量は約3,000mmであり、東京の約1.9倍と多雨である。風向は9月および10月が北東、それ以外は西・西南西・南西が卓越し、風速10m/s以上の強風日数は年間約160日である。台風の伊豆・小笠原諸島への接近数は年間約5個であり、台風のほか、寒候期の季節風、低気圧などの影響により大雨、強風、高波となることが多い。


社会条件



村の人口は2,583人、世帯数は1,681世帯であり、集落は島内一円に点在し、大きくは5つの集落(神着、伊豆、伊ヶ谷、阿古、坪田)が形成されている(平成29年1月1日現在)。

島内を一周する道路は、三宅一周道路(都道212号三宅循環線)が唯一であり、公共交通手段として村営バスが運行している。

本土との交通には、海路と空路がある。海路は、東京の竹芝桟橋と大型客船で結ばれ、所要時間は約6時間30分である。空路は、調布飛行場と飛行機、伊豆大島および御蔵島とヘリコプターで結ばれ、所要時間は調布飛行場まで約50分、伊豆大島まで約20分、御蔵島まで約10分である。いずれも、気象状況により船舶の航行や接岸、航空機の航行に影響がでることもある。

来島者は年間約4万5千人であり、宿泊施設(旅館、民宿、バンガロー、キャンプ場)は38か所(総収容者数833人)である(平成28年3月31日現在)。




三宅島火山の概要



三宅島の地形図 (気象庁,2013)

三宅島の地形図 (気象庁,2013)

三宅島火山は、玄武岩~安山岩から成る成層火山である。中央部に直径約3.5kmのカルデラ(桑木平カルデラ)があり、その内側には2000年噴火により生じた直径1.6kmのカルデラがある。山頂部の火口のほか、山腹には割れ目噴火による山腹火口が多く、海岸近くにはマグマ水蒸気噴火による爆裂火口(大路池(たいろいけ)等)が多数ある。


15世紀以降、中規模以上の噴火が13回発生しており、間隔は17~69年である。有史時代の活動は、山頂から北-東南東、西-南南西の方向の山腹の割れ目火口からの短期間の噴火であり、時に山頂噴火を伴う。スコリアの放出・溶岩流出のほか、割れ目火口が海岸近くに達したときは海岸付近では激しいマグマ水蒸気噴火が起こりやすい(1983年噴火等)。


噴火前後に地震活動を伴うが、地震活動域と噴火地点とは一致しないことがある。2000年噴火では、島内で始まった地震活動が徐々に西方沖に移動して海底噴火に至り、その後山頂直下の地震活動が始まり、山頂噴火・カルデラ形成へと推移した。1983年噴火では、前年から南方海域での群発地震活動等があり、噴火直前の地震活動は噴火開始の1時間半前からであった。

1962年噴火等、過去のいくつかの噴火では、噴火後に有感地震が頻発した。2000年6月に始まった噴火活動では、山頂噴火が発生するとともにカルデラを形成し、さらに高濃度の二酸化硫黄を含む火山ガスが長期間にわたって大量に放出された。


※大規模噴火、中規模噴火、小規模噴火を分ける閾値は、それぞれ4000万DREm3、40万DREm3とした。なお、「DRE」とは、マグマ噴火やマグマ水蒸気噴火による総噴出物量をマグマの容積に換算したものである。

(参考:日本活火山総覧(第4版)三宅島,p976 ,気象庁(2013))




三宅島火山の火口分布



三宅島火山の火口分布は、八丁平カルデラを中心とした山頂火口と、山頂から北-東南東、西-南南西の方向の山腹割れ目火口で特徴付けられる。また、割れ目火口が海岸付近まで拡大した際には、マグマ水蒸気噴火に伴う爆裂火口(マール)が形成されることが多い。

三宅島火山の噴火様式別の火口分布は、下図のとおりである。


三宅島火山の火口分布図 (津久井ほか,2001を改変)
三宅島火山の火口分布図 (津久井ほか,2001を改変) 凡例

三宅島火山の火口分布図 (津久井ほか,2001を改変)





三宅島 火山地質図



火山地質図とは、過去の噴火活動で形成された地層の分布等を示した地図であり、火山噴出物分布や噴火規模等の火山活動を想定するための基礎資料となる。


三宅島火山地質図 (津久井ほか,2005) 三宅島火山地質図 凡例 (津久井ほか,2005を改変) 1

三宅島火山地質図 凡例 (津久井ほか,2005を改変) 2

三宅島火山地質図 凡例 (津久井ほか,2005を改変) 3

三宅島火山地質図 (津久井ほか,2005) / 三宅島火山地質図 凡例 (津久井ほか,2005を改変)





三宅島想定される火山活動等


想定される火山活動


火口位置


三宅島では、2000年噴火以前は山腹噴火の頻度が高かったが、2000年噴火における陥没カルデラの形成により、山頂噴火の可能性が高くなった。また、山腹噴火が発生する場合は、カルデラ底の標高よりも低い場所で発生する可能性が高いと考えられる。


噴火特性(火山現象、噴火様式など)


三宅島火山の噴火特性は、次のとおりである。

◯ 最近の噴火は、スコリアの放出と溶岩の流出が主である。

◯ 2000年噴火では、マグマの側方貫入に伴い山頂が陥没し、水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火により細粒火山灰が放出された。また、大量の火山ガスが長期間放出された。

◯ 山頂噴火がマグマ噴火になるかマグマ水蒸気噴火になるかは、現時点では判断が困難である。大規模な水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火の場合は、山腹にまで大きな噴石が飛散し、火砕流が発生する可能性がある。

◯ 海岸近くや浅い海底で噴火が発生する場合は、爆発的なマグマ水蒸気噴火を起こすこともある。マグマ水蒸気噴火が発生する可能性のある陸域の標高および海域の水深は、次のとおりである。

陸域:標高200m以下
海域:水深100m以浅(火砕サージ発生)、水深400m以浅(海面に噴煙等)

◯ 現在は、カルデラ内の南縁近くに火孔が開口しており、今後しばらくの間は、山頂噴火時に溶岩がカルデラ外に溢流する可能性は低い。



想定される噴火ケースと火山現象



三宅島火山で想定される噴火ケースおよび各ケースで想定される災害要因となる火山現象は、次のとおりである。
なお、カルデラ形成噴火は、避難計画およびマニュアル編においては山頂噴火に含める。


噴火ケース 火山現象
山頂噴火 噴石、火山灰、溶岩流、火砕サージ、火山ガス、降灰後土石流
カルデラ形成噴火 噴石、火山灰、火砕流、火砕サージ、火山ガス、降灰後土石流
山腹噴火 噴石、火山灰、溶岩流、火砕サージ




三宅島 火山ハザード(防災)マップ



火山ハザードマップとは、各火山災害要因(大きな噴石、溶岩流など)の影響が及ぶおそれのある範囲を地図上に特定し、視覚的に分りやすく描画したものである。また、火山ハザードマップに、防災上必要な情報(避難先等に関する情報、噴火警報等の解説、住民等への情報伝達手段など)を付加したものを火山防災マップという。


三宅島火山では、三宅島火山防災マップ(下図)が作成されているほか、「溶岩流」および「降灰後土石流」については、「三宅島火山噴火危険範囲予測図作成のための検討委託(東京都建設局河川部, 2016)」において数値シミュレーションが実施されている。

また、「火山ガス」について、三宅村による観測データを基に平成17年度以降の二酸化硫黄ガス濃度の分布を整理したものを示す。


※下図の電子データは、防災科学技術研究所のHPから取得できる。
(https://vivaweb2.bosai.go.jp/v-hazard/L_read/62miyakejima/62miyake_1h01-L.pdf)


三宅島火山防災マップ (三宅村,1994)

三宅島火山防災マップ (三宅村,1994)




三宅島 噴火警戒レベル



噴火警戒レベルとは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分した指標である。

噴火警戒レベルが運用されている火山では、火山防災協議会で合意された避難計画等に基づき、気象庁は「警戒が必要な範囲」を明示し、噴火警戒レベルを付して噴火警報・予報を発表し、市町村等の防災機関は入山規制や避難勧告等の防災対応をとる。


三宅島 噴火警戒レベル 1
三宅島 噴火警戒レベル 2

(平成29年5月)  




三宅島 噴火警戒レベル と 避難対応の目安 立入規制の範囲



レベル 規制種別 避難対応の目安 立入規制の範囲
火口内および近傍の立入規制 山頂火口
火口縁から海岸方向に約100mまでの範囲
主火孔から半径500mの範囲
雄山環状線から山頂側の範囲の立入規制 雄山環状線から山頂側の範囲
居住地域の境界から山頂側の範囲の立入規制
噴火の可能性がある場合は、避難行動要支援者の避難準備
噴火が発生した場合は、避難行動要支援者の島内避難、来島者への島外避難の呼びかけ
居住地域の境界から山頂側の範囲
山頂噴火 居住地域までの必要な範囲の立入規制
一般住民の避難準備、避難行動要支援者の島外避難、来島者への島外避難の呼びかけ
居住地域までの必要な範囲
山腹噴火 噴火の影響が及ぶ範囲・及ぶおそれのある範囲の立入規制
一般住民の避難準備、避難行動要支援者の島内避難または島外避難、来島者への島外避難の呼びかけ
噴火の影響が及ぶ範囲
噴火の影響が及ぶおそれのある範囲
山頂噴火 居住地域までの必要な範囲の立入規制
一般住民・避難行動要支援者・来島者の島外避難
居住地域までの必要な範囲
山腹噴火 噴火の影響が及ぶ範囲・及ぶおそれのある範囲の立入規制
一般住民・避難行動要支援者の島内避難または島外避難、来島者の島外避難
噴火の影響が及ぶ範囲
噴火の影響が及ぶおそれのある範囲



三宅島 立入規制範囲図 および 規制箇所(山頂噴火)



三宅島 立入規制範囲図 および 規制箇所(山頂噴火)

三宅島 立入規制範囲図 および 規制箇所(山頂噴火)





三宅島 防災関連施設等の位置図



三宅島 防災関連施設等の位置図

三宅島 防災関連施設等の位置図





三宅島火山噴火 避難実績



三宅島火山の噴火に伴う避難実績について、避難記録がまとめられている3回の噴火(1962年噴火、1983年噴火、2000年噴火)の避難の状況を次表に示す。


噴火年 避難の状況
1962年 ・島内避難者数 累計 24,238人(8月25日~9月22日)
一日最大 2,450人(8月30日)
・島外避難者数 3,670人※(9月2日現在)
※自主避難者(1,938人)と館山地区への集団避難者(1,732人)の合計
1983年 ・島内避難者数 累計 27,323人(10月3日~11月30日)
一日最大 1,774人(10月3日)
・島外避難者数 859人※(10月10日現在)
※船等により島外に自主避難した島民の人数
2000年 ・防災および生活維持関係者を除く住民※に対して島外避難指示(9月2日)
※9月1日現在の人口3,829人
・定期船により避難(9月2日~4日)
・避難指示解除(2005年2月1日)

(参考:昭和37年三宅島噴火災害誌,p108‐109,東京都(1964)、記録昭和58年三宅島噴火災害,p161‐167,東京都(1985)、
平成12年(2000年)三宅島噴火災害誌,p44,東京都(2007))





三宅島火山の噴火履歴



三宅島火山の形成史、有史以降の火山活動、累積噴出物量、火口分布、火山地質図、災害実績、避難実績を以下に示す。



形成史



三宅島火山の活動は、カルデラの形成や休止期をもとに、5つの活動期に区分される。


先大船戸期 桑木平カルデラ形成までの活動期。山体の西-北西山腹を構成し、玄武岩質の溶岩・火砕岩などが分布する。桑木平カルデラは、1万年前には既に存在していたと思われるが、いつどのようにしてできたか、まだよくわかっていない。
大船戸期 後桑木平カルデラ火山が成長した活動期。澪が平溶岩・スコリア丘など、主として玄武岩質の溶岩・火砕岩などから成る。約8000~7500年前に島の北西でやや規模の大きなマグマ水蒸気噴火が起こった後、4000年前まで活動は不活発であった。
坪田期 約4000~2500年前までの活動期。南山腹に広がり坪田から龍根までの海食崖に露出する溶岩と、約4000年前に北西山麓で起こった伊ヶ谷豆石噴火による溶岩・火山豆石などが分布する。前後の活動期とは、噴出物の化学組成で明瞭に区分される。
雄山期 約2500年前の八丁平カルデラを形成したとされる八丁平噴火と、八丁平カルデラ内で成長した後カルデラ火山である雄山が形成された活動期。玄武岩質の溶岩やスコリアなどが分布する。八丁平噴火以後は、カルデラ内の噴火や、山腹での割れ目噴火が発生している。
また、海岸まで達した割れ目噴火によって爆裂火口が形成されている(三池等)。
新澪期 雄山期から300年あまりの休止期間を経て、1469年から1983年までの12回の噴火が記録された活動期。雄山期に比べ、より玄武岩質な溶岩やスコリアなどが分布する。新澪期の活動は、ほとんどが山腹での割れ目噴火である。

(参考:三宅島火山地質図,p2-3,津久井ほか(2005))




三宅島火山の有史以降の火山活動



三宅島火山の有史以降の火山活動について、噴火年代、噴火規模、噴火様式、噴火場所、活動経過・発生現象を整理し、次表に示す。


噴火年代 噴火場所 噴火様式
噴火規模 (マグマ噴出量)
活動経過・発生現象
832年 北山腹火口列 マグマ水蒸気噴火
中規模 (0.007 DREkm3)
降下火砕物
850年 八丁平カルデラ内 三池マール
マグマ噴火→マグマ水蒸気噴火
大規模 (0.082 DREkm3)
溶岩流→降下火砕物
886~
1154年
南西山腹 (阿古南東)
マグマ噴火
中規模 (0.012 DREkm3)
降下火砕物
1085年 南西山腹 (桑木平カルデラ内)
マグマ噴火
中規模 (0.001 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流
1154年 中央火口(雄山)
北東山麓(火の山峠
~椎取神社付近の噴火割れ目)
マグマ噴火
中規模 (0.05 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流
1469年 西山腹 (桑木平カルデ
ラ西よりの貯水池付近)
マグマ噴火
中規模 (0.002 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流
1535年 山頂~南東山麓噴火割れ目
マグマ噴火
中規模 (0.003 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流
1595年 南東山麓割れ目火口列
マグマ噴火
中規模 (0.001 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流
1643年 西山腹(コシキスコリア
丘~桑木平噴火割れ目)
マグマ噴火
中規模 (0.012 DREkm3)
約3週間活動。降下火砕物、溶岩流。阿古村(現在位置とは異なる)は全村焼失。旧坪田村は火山灰、焼石により人家、畑が埋没
1712年 南南西山麓噴火割れ目
マグマ噴火
中規模 (0.001 DREkm3)
約2週間活動。降下火砕物、溶岩流。阿古村では泥水の噴出により家屋埋没と牛馬に被害
1763~
1769年
南南西山麓噴火割れ目
および雄山山頂
マグマ噴火 マグマ水蒸気噴火
大規模 (0.066 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流。薄木に火口形成(新澪池)。
雄山山頂、阿古村薄木で噴火。
阿古・坪田両村に噴石、降灰
1811年 山頂~東北東噴火割れ目
マグマ噴火
中規模 (0.02 DREkm3)
約1週間活動。降下火砕物、溶岩流。北西山麓に2つの割れ目形成
1835年 西山腹 (桑木平カルデラ内)
マグマ噴火
中規模 (0.0004 DREkm3)
10日間活動。降下火砕物、溶岩流。噴火終了後も地震頻発し、伊ヶ谷、阿古両村地内で崩壊、地割れ
1874年 北山腹
マグマ噴火
中規模 (0.016 DREkm3)
約2週間活動。降下火砕物→溶岩流。溶岩は東郷に達し海に陸地をつくる。
人家45軒が溶岩に埋没。
死者1名
1940年 北東山腹噴火割れ目 山頂火口
マグマ噴火
中規模 (0.012 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流。
溶岩は島下集落を覆って赤場暁に達した。山頂噴火では、多量の火山灰、火山弾を放出。
死者11名、負傷者20名、牛の被害35頭、全壊・焼失家屋24棟等
1962年 北東山腹噴火割れ目
マグマ噴火
中規模 (0.007 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流噴出。
割れ目噴火、溶岩噴泉多数の火口を形成。
噴火は30時間で終了したが、噴火中から有感地震頻発し、8月30日には伊豆集落で2,000回以上に達した。このため学童は島外へ疎開。
被害は焼失家屋5棟のほか道路、山林、耕地など。噴石丘「三七(さんしち)山」生成
1983年 南南西山麓噴火割れ目
新澪池付近 新鼻付近
マグマ噴火 マグマ水蒸気噴火
中規模 (0.012 DREkm3)
降下火砕物、溶岩流、火砕サージ。南西山腹に生じた割れ目から噴火。
溶岩噴泉。溶岩流、降下火砕物による住宅の埋没・焼失約400棟。山林耕地等に被害
2000~
2002年
山頂カルデラ
三宅島西方約1km沖
水蒸気噴火
マグマ水蒸気噴火
(海水変色)
中規模 (0.0093 DREkm3)
※マグマ噴出物以外を含む
テフラ総量
降下火砕物、火砕流、火砕サージ。島内で発生した地殻変動を伴う地震活動が徐々に三宅島西方沖へ移動し西方海域で海底噴火。
震源はさらに西方沖へ移動し、新島-神津島近海で群発地震活動が継続。
その後、雄山山頂で噴火、山頂部が陥没し、断続的に噴火し、カルデラ形成。その後の噴火では低温の火砕流発生し、雨による泥流が頻発した。
9月初めに全島避難。噴火後は山頂火口からの多量の火山ガス放出活動に移行
2004~
2005年
山頂カルデラ ごく小規模な噴火
降下火砕物
2006年 山頂カルデラ ごく小規模な噴火
降下火砕物
2008年 山頂カルデラ ごく小規模な噴火
2009年 山頂カルデラ ごく小規模な噴火
2010年 山頂カルデラ ごく小規模な噴火
2013年 山頂カルデラ
ごく小規模な噴火・地震
ごく少量の降灰。島西方沖約10km付近で地震活動が活発化 (最大M6.2)

(参考:日本活火山総覧(第4版)三宅島,p982-984,気象庁(2013)、火山噴火予知連絡会会報 第114号,気象庁(2013)、火山噴火予知連絡会会報 第115号,気象庁(2013))、Nakada,et.al.(2005))





火山用語



用語 意味
安山岩 浅間山、桜島など日本の火山の大部分を構成する火山岩であり、玄武岩とデイサイトとの中間的な組成をもつ。安山岩質のマグマは玄武岩質マグマに比べて二酸化珪素(SiO2)を多く含み、粘性が高いため、爆発的な噴火を発生させることが多い。
火映 火山ガスが燃焼したり、高温の溶岩などが存在している場合に、火口内の赤熱状態が噴煙や雲に反射して明るく見える現象
火砕サージ 重力の作用により生じる、火山斜面などに沿う高速の希薄な流れで、固形物としては火山灰などの細粒物が主体。高温の砂嵐のような現象であるが、火砕流に比べて見掛けの密度が小さく、停止後の堆積物の厚さは非常に薄い。火砕流の前面や側面から発生することもある。
構造物を破壊するほどの威力があり、特に高温の場合は火災を引き起こすこともある。また、マグマ水蒸気噴火や水蒸気噴火などに伴って、垂直に上昇する噴煙柱の基部から、火砕サージが地表や海面に沿って高速で環状に広がることがある。このような環状に広がる火砕サージを、特に「ベースサージ」と呼ぶことがある。低温で湿っていることが多く、浅い水底での噴火や地下水の豊富な陸上の噴火などで発生することがある。
火砕物
(火山砕屑物)
火口から放出される固形または半固形の岩石の破片の総称。直径64mm以上は「火山岩塊」、2~64mmは「火山礫」、2mm以下は「火山灰」に分類される。
火砕流 岩片と火山ガスなどが一体となって、高速で山体を流下する現象。大規模な場合は地形の起伏にかかわらず広範囲に広がり、通過域を焼失、埋没させ、破壊力が大きな極めて恐ろしい火山現象である。
火山ガス マグマ中の揮発成分起源の気体のことで、噴火口・噴気孔・温泉湧出孔などから噴出する。
成分は、大部分が水蒸気であるが、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などを含んでいる。
これらを吸い込むと、死に至ることもある。火山ガスは空気より重いため、火山地域の窪地や谷などに溜まっていることがある。
火山岩 マグマが、地表あるいは地表近くで、比較的急速に冷却固結した岩石。一般に、斑晶(比較的粗粒の造岩鉱物)と、その素地となる石基(細かい結晶および火山ガラス)からなる岩石。
火山岩は、その化学組成によって、玄武岩、安山岩、デイサイト、流紋岩などに区分される。
火山性微動 火山活動に起因して発生する連続した振動で、振幅や周期が比較的一定のものとそれらの変化が大きいものがある。継続時間も極めて短いものから、常時発生しているものまである。
一般に玄武岩質火山で観測されることが多く、安山岩質火山でも観測されることがある。マグマや火山ガスの運動や移動にともなう場合や噴火時に火山灰などの噴出活動と連動して発生する場合などがある。噴火の前駆現象として認められることも多いが、噴火に確実につながる現象ではないことに注意が必要である。
火山弾 特定の形をした火山礫、火山岩塊。マグマの破片が半固結のまま火口から放出され、完全に固まらないうちに空中を飛行し着地するために独特な形となったもの。その形から紡錘形火山弾、パン皮火山弾、牛糞状火山弾などと呼ばれるものがある。
火山地質図 火山地域の地質図。産業技術総合研究所で、活火山の噴火履歴を地質図としてまとめ、提供しているものを、特にそう呼ぶことがある。
火山灰 火砕物の一種で、直径が2mm以下のもの。慢性の喘息や、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)の症状を悪化させたり、健康な人でも目や鼻・のど等呼吸器などに影響を与えるおそれがある。また、降ってくる火山灰や積もった火山灰が、視界不良や車のスリップなどを引き起こすおそれがある。
火山噴火予知
連絡会
火山噴火予知計画(現在は、地震予知計画と一体化し「災害軽減のための地震及び火山観測研究計画」と呼ばれる)を推進するために設けられた会議体で、大学等の研究機関、火山防災の行政機関等で構成される。事務局を気象庁が担当することから、気象庁長官の私的諮問機関として位置付けられた。
活火山 「概ね過去1万年以内に噴火した火山」および「現在活発な噴気活動のある火山」のこと。
カルデラ 火山地域に見られる大きな円形またはそれに近い形の火山活動に伴い生じた凹地のこと。
一般に、直径2kmを越えるものを「カルデラ」と呼び、直径2km未満を「火口」と呼ぶ。カルデラの多くは、大量の火砕物の噴出によって火口下に空洞が生じ、陥没を引き起こして形成されたと考えられている。カルデラ周辺には火砕物(火砕流堆積物)の台地を形成しているものが多い。
岩脈 鉛直に近い板状の貫入岩体
空振 噴火(爆発)等に伴って発生する空気の振動。窓ガラスが割れることもある。
玄武岩 火山岩のうちで、二酸化珪素(SiO2)に比較的乏しく、鉄、マグネシウムに富むもののこと。玄武岩質のマグマは、二酸化珪素含有量が低いため(50重量%程度)粘性が低く、比較的薄い溶岩流となりやすい。三宅島、富士山は玄武岩質マグマによって形成された火山の代表例である。
降下火砕物 火口から噴き上げられ、いったん上空まで運ばれた噴煙から降下した火砕物のこと。上空に噴き上げられた火砕物は、上層風に流されて火山の周辺や風下側に降下し、人々の生活や経済活動に大きな打撃を与える。「火山灰」、「噴石」を参照のこと。
降灰 火山灰・火山礫が降下する現象のこと。「火山灰」を参照のこと。
山体崩壊 山体の一部が大規模に崩壊する現象。一般に、火山体は力学的に不安定な構造をもつために、噴火や地震に伴って生じることがある。頻度としては少ないが、大規模な破壊を伴うため、防災上注目されている。
水蒸気噴火 地下に閉じこめられた高温・高圧の熱水が急激な減圧や温度上昇によって不安定化し、急激に水蒸気化して体積膨張することにより、爆発現象が生じ、周囲の岩石を破砕、放出する。
放出物にはマグマ由来の岩石を含まない。
スコリア 火砕物の一種。多孔質で暗色、鉄・マグネシウムに富むものをいう。
ストロンボリ式
噴火
比較的短い間隔で、周期的に火口からマグマの破片や火山弾などを放出する噴火の様式。
流動性の大きい玄武岩質マグマの活動に伴うことが多い。
スパター 火山弾の一種。火口から放出された溶岩片が未固結のまま火口周辺に着地集積したもの。
成層火山 中心火口から噴出した火砕物と溶岩との累積によって生じた火山。富士山のような大型の円錐形火山の多くは成層火山である。
側火山 成層火山の山腹など、山頂火口から離れたところに噴出した小型の火山。かつては「寄生火山」とも呼ばれた。
タフリング
(マール、
凝灰岩リング)
マグマ水蒸気噴火のような浅所での爆発的な噴火によって生じた火口
地殻変動 測地測量などによって認められる現在の地殻の変位・変形のこと。
地磁気 磁石としての地球の性質と、それが作り出す磁場を「地磁気」という。玄武岩は鉄分がある鉱物を比較的多量に含んでいるので、玄武岩質火山は磁気の強さが大きい。600℃位に熱せられると、強磁性鉱物は磁性を失う。また、地下に力が作用して岩石がひずむと、ピエゾ磁気が発生して地磁気の値が変化する。玄武岩質火山では、地磁気の変化は長期的噴火予知に重要である。
泥流 「土石流」とほぼ同じ。「土石流」を参照のこと。
テフラ 火砕物のこと。噴火により砕かれてつくられたマグマ片、岩片の総称
土石流 山腹、川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるものをいう。火山灰が山腹斜面に堆積すると、少量の降雨でも土石流が発生することがある。ときには時速60kmを超える速度で流れ下るため、家や橋を破壊する力が大きい。土木の分野では、噴火とほぼ同時に発生する水にほぼ飽和した土砂の流れを「火山泥流」、噴火後に降雨等で発生する土砂の流れを「土石流」と呼ぶことが多い。火山学の分野では、これらを区別せずに「土石流」と呼ぶが、最近ではインドネシア語に由来する「ラハール」と呼ぶことが多くなった。
プリニー式
噴火
大量の軽石や火山灰が火山ガスとともに垂直に噴き上げられる大規模な噴火で、高度10km以上にも達する噴煙柱が特徴的である。通常、噴煙柱は数時間から数十時間程度継続する。
やや規模の小さなものは「準プリニー式噴火」と呼ばれる。噴煙柱の崩壊によって火砕流が発生するおそれがあり、広範囲での避難等が必要である。
プレート
テクトニクス
地球表層の厚さ数十㎞の部分は、その下より固い(ゆで卵の白身を覆う殻に似る)。この殻は全地表で十数個のブロックに分かれ、各ブロックは剛体的で変形しないので「プレート(板)」と呼ばれる。各プレートは相対的に運動していて、プレート同士の境界で地震・火山活動ほか、各種の地殻変動を起こす。このような考え全体を「プレートテクトニクス(プレート構造論)」という。
噴煙 火山ガス、火山灰および小さな噴石などが濃集し、煙状を呈したもの。また、火山噴火の際に、火口から直接立ち上る噴煙を、特に「噴煙柱」という。白色噴煙は水蒸気、火山ガスのみからなるため、火口から高く立ち上っても噴火とは言わないが、有色噴煙は火山灰などの固形物を含むため、これが確認される場合は噴火が生じていることになる。
噴火 火口から火山灰等の固形物や溶岩を火口外へ放出する現象
噴気 火口や岩石の割れ目などの隙間(噴気孔)から、噴出している水蒸気、火山ガス、またはその噴出している状態
噴出率
(噴出レート)
単位時間当たりに噴出する溶岩・火砕物の体積のこと。
噴石
(大きな噴石・
小さな噴石)
気象庁は、火口から放出される比較的大きなマグマ片、岩石の破片のことを「噴石」と呼ぶ。明確なサイズの規定はないが、火山灰よりも粗粒で、当たると怪我や死に至るおそれのあるものを指している。このうち、直径数十cm以上の噴石は大気による抵抗をあまり受けずに、火口から弾道を描いて飛来し、着弾時に地面にクレーターを作るなど多大な被害をもたらす可能性があるため「大きな噴石」として区別している。ハザードマップなどに「噴石の到達範囲」などと書かれている場合は、多くの場合、この「大きな噴石の到達範囲」のことである。一方、こぶし大程度の噴石は、いったん噴煙とともに上空に運ばれ、その後風に流され、遠方まで運ばれて降下することがある。気象庁では、このような噴石を「小さな噴石」と呼ぶ。この場合は密度にもよるが、火口から10㎞以上の遠方まで達することがある。小さいとは言え、上空から落下してくるものなので、毎秒10m程度の落下速度となることもあり、当たり所が悪ければ、人命にかかわる。このような「小さな噴石」が噴石の到達範囲外でも落下することがあるので、風下側では遠方でも注意が必要である。
噴石丘 「火砕丘」にほぼ同じ。「火砕丘」を参照のこと。
放射性
炭素年代
生物遺体中の放射性炭素14C濃度が、生物の死後、時間とともに減少することを利用した年代測定法。現在から数万年前までの間の年代測定法として広く利用される。
マール 「タフリング」を参照のこと。
マグマ 地下に存在する溶融状態にある岩石物質で、おもに溶融した珪酸塩の液体からなり、少量の造岩鉱物と揮発性成分を含む。なお、マグマが地表にあらわれたものを「溶岩」ということもある。
マグマ貫入 マグマの圧力の急増等により、地殻内のマグマが周辺岩体の内部に入り込むこと。
マグマ水蒸気
噴火
高温のマグマが地表や地下にある水、あるいは海水と接触し、マグマの熱により、急速に多量の水蒸気を発生させマグマと供に噴出する爆発的噴火。深海底の噴火では高い水圧のために爆発的にならないが、水深数百mより浅い海底での噴火の場合、マグマ水蒸気噴火となることが多い。
マグマ溜り 火山体の地下にあって、相当量のマグマが蓄えられている所。マグマと周囲の岩盤との密度のつり合いのために、一定深度に停滞すると考えられている。通常、火山の直下、数kmから10km程度の深さにあり、噴火に際しては、そこからマグマが地表に移動・噴出すると考えられている。
マグマ噴火 マグマが噴出する噴火
鳴動 火口またはその付近に音源を持つ連続的な音響で、特に火山活動に関連して起きるもの。
時には震動を伴うこともある。
溶岩 マグマが地表に噴出し流れ出た流体を指すこともあるが、それが固化した岩石も指す。溶岩の流れのことを「溶岩流」といい、噴出率、化学組成、温度、流下場所の地形により流れ方や速度が変わる。
溶岩噴泉 粘性の低い溶岩を火口から噴水のように噴き上げる噴火。噴泉の高さは数百mに達することもある。ハワイやアイスランドなど玄武岩質の火山に多く見られる。割れ目噴火の際に割れ目火口沿いに長く伸びる溶岩噴泉を「火のカーテン」と呼ぶ。
割れ目噴火 地表に生じた細長い割れ目(割れ目火口)から噴出する噴火。割れ目の長さは数百m以上に達することもある。

(参考)
・火山防災マップ作成指針(内閣府等,平成25年3月) ・火山噴火災害危険区域予測図作成指針(国土庁,平成4年) ・火山活動解説資料(web版)「火山」の用語に関する解説(気象庁) ・地震及び火山噴火予知のための観測研究計画(文部科学省,平成23年度年次報告) ・伊豆諸島における火山噴火の特質等に関する調査・研究報告書(東京都防災会議,平成2年5月) ・東京都地域防災計画,火山編(東京都防災会議,平成21年修正) ・地学事典,新版(地学団体研究会編,平成8年10月,平凡社)



以上、「三宅島火山避難計画 三宅島火山防災協議会 平成 29年5月」からの要約 ・ 抜粋です
詳細につきましては、「三宅島火山避難計画 三宅島火山防災協議会 平成 29年5月」をご参照下さい


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2017年5月14日

火山噴火避難計画 自家用車使用記す 伊豆大島・三宅島 東京新聞 2017年5月14日


 伊豆大島(大島町)と三宅島(三宅村)で噴火が起きた場合の新たな避難計画がまとまった。二〇一四年の御嶽山噴火を受けて法律で作成が義務付けられたもので、従来は避難の際に使用できなかった自家用車について、状況に応じて使えるようにすることなどが盛り込まれた。
 六十三人の死者・行方不明者を出した御嶽山噴火を教訓に改正された活動火山対策特別措置法(活火山法)では、全国四十九の火山の周辺自治体に住民や観光客の安全を確保するため、避難計画の作成を求めている。都内では伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ケ島の伊豆諸島六島にある火山が対象となっている。
 都庁で十二日に「伊豆諸島六火山防災協議会合同会議」があり、伊豆大島と三宅島の避難計画案を承認した。伊豆大島では一九八六年、三宅島では二〇〇〇年にそれぞれ噴火が起きているが、当時と比べ、島内を走る路線バスの台数が減少している。このため、避難に使えるバスの台数も少なくなっており、突発的に噴火が起きるなど事態が切迫した場合は自家用車を利用してもよいとした。


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